1億円の設備を20万円にまとめ上げた三菱電機、HEMSと家電で何ができるエネルギー管理(1/2 ページ)

三菱電機が家庭用エネルギー管理システム(HEMS)事業に乗り出す。2年以上の期間と多額の費用をかけて実証実験を進めた上での参入だ。他社がHEMSで先行するなか、電気料金の上限を自動的に守る仕組みなどを取り込み、他にない特色を打ち出した。

» 2013年08月29日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 三菱電機は2013年8月、スマートハウス関連事業に本格参入することを発表した。第1弾として、家庭用のエネルギー管理システム「三菱HEMS」と、三菱HEMSに接続できる家電7種類を発表、2013年中に順次投入する。

 同社は、約2年前の2011年5月、神奈川県鎌倉市にスマートグリッドの実証実験用住宅「大船スマートハウス」を立ち上げている。開設時に内部を見学する機会を得たが、HEMSにあまりにも高度な機能を詰め込みすぎているように見えた。例えば「生活パターンセンサー」だ。宅内で使用する家電製品の電流波形をまず登録しておく。その後、家電のスイッチを入れると、分電盤に伝わる高周波電流を検知し、スイッチを入れた家電を自動判別できるという仕組みだ(図1)。通信機能がない通常の家電であってもいつ利用したのかが分かる。機能としては優れたものだ。

図1 生活パターンセンサーが動作する様子。電子レンジと掃除機が順に利用されたことを検知している。2011年5月時点。

 大船スマートハウスは2階建ての一般家屋だ。大型で延べ床面積は223m2ある。しかし、建設コストを質問したところ、「1億円」(同社常務執行役リビング・デジタルメディア事業担当の梅村博之氏)*1)という答えが返ってきた。このとき、三菱電機のスマートハウスの実用化は難しいのではと感じた。

*1) コストアップ要因は家屋の材料ではなく、配電関係にあるという説明だった。

自動節電とファミリーカレンダーを打ち出す

 2013年12月に発売する三菱HEMS(情報収集ユニット、エネルギー計測ユニット)は18万9000円の機器だ(図2)。

図2 三菱HEMS。情報収集ユニット(左)とエネルギー計測ユニット(右)からなる。高さは20〜30cm。

 三菱HEMSには生活パターンセンサーは組み込まれていない。ただし、さらに有用な機能が備わっている。「自動節電機能」と「ファミリーカレンダー機能」だ。いずれも省エネと快適性を両立するための機能だという。

 自動節電機能とは、当月の目標電気料金を入力すると、その料金を実現するようにHEMSが自動的に節電するというもの。やみくもにエアコンのスイッチを切るというような制御ではなく、製品ごと節電モードをうまく使って快適性を維持しながら節電を実現するという。

 消費電力量と電気料金を機器別、系統別、時系列にグラフ表示することもできるため、目標をどのように達成したのか確認できる。なお、パルス式流量計を別途導入すればガスと水道についても消費量(光熱費)を計測できる。

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