水素は人体には無害だが、空気中で爆発する可能性がある。ただし気体の状態では軽くて拡散しやすいため、爆発の条件は限られる。高圧ガスの取り扱いを定めた法律に従って適切に利用すれば安全性は高い。燃料電池に関する規制も数多くあるが、普及促進の観点から見直しが進められている。
連載第4回:「燃料電池が自動車からオフィスまで、2020年代には普及価格へ」
水素はCO2を排出しないクリーンなエネルギーとして期待は大きい。しかし原子力のように人体や自然環境に重大な被害を与えるようなものであっては、日本の未来を託すことはできない。水素は一定の条件で爆発する危険性があり、それを回避するための十分な安全対策が欠かせない。
水素に限らず天然ガス(メタン)やプロパンガス、ガソリンなどは、空気中で一定の濃度になった時に、火をつけると爆発する性質がある。そうした特定の状況にならなければ爆発することはない。特に水素は空気中で拡散しやすいために、爆発の可能性が生じる濃度が長時間にわたって続くケースはまれである(図1)。
最も危険な状況は密閉された建物や容器の中で、大量の水素と酸素が混在する場合だ。そのような状態で500度以上の熱エネルギーが加わると爆発する危険性が大きくなる。第1の安全対策は水素の漏れを防ぐことである。例えば燃料電池自動車に対しては、水素タンクに漏れを防止する仕組みが法律で義務づけられている(図2)。
燃料電池自動車の安全性に関しては2013年に世界統一の基準が定められた。水素は空気中で4%以上の濃度になると爆発する可能性が生じる。このため排気する気体の水素濃度が4%以上にならないことを統一基準に設定した。ほかにも水素タンクの強度や、衝突時の水素放出量などを具体的な数値で決めている(図3)。
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