「電力広域的運営推進機関」を国が認可、2015年4月に100人体制で業務開始動き出す電力システム改革(17)

電力システム改革の第1段階を担う「電力広域的運営推進機関」の設立が国の認可を受けて正式に決まった。2015年4月1日に5人の役員と100人規模の職員で業務を開始する。初年度の事業規模は約38億円を想定していて、職員の7割を電力会社からの出向者が占める見込みだ。

» 2014年08月27日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第16回:「小売全面自由化で発電事業者に規制、出力1万kW以上は届出制に」

 「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)は小売の全面自由化に備えて、全国レベルの需要と供給を調整する役割を担う。2014年8月22日に経済産業大臣が設立を認可したことで、予定どおり2015年4月1日に業務を開始することが確定した。

 すでに7月17日には129社の電気事業者による創立総会を開催して、広域機関の定款や業務規定などの基本事項は固まっている。機関の中枢を担う5人の役員も創立総会で選任済みである。理事長を学識者から選んだほか、3人の理事には小売・発電・送配電の各事業者のうち最大手の企業から就任する(図1)。

図1 理事会の構成メンバーと設立時の役員。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 設立時のオフィスは東京都千代田区の2カ所に分散させ、さらに災害対策のためにバックアップのオフィスも設ける予定だ。日常の業務を運営する組織は4部2室の体制になる(図2)。このうち最大の部門は「運用部」で、需給計画のとりまとめのほか、実際の需給状況を監視・管理する「広域運用センター」の役割も担う。

図2 組織名と業務分掌。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 運用部は電力会社の人材が大半を占める見込みである。広域機関の会員になる電気事業者から希望者を募集したところ、約40人を予定している運用部の人員の8割が電力会社(一般電気事業者)からの出向希望者だった(図3)。このほかの部門を含めても職員全体の7割程度を電力会社が占める可能性があり、第三者による業務のチェック体制が不可欠になる。

図3 事業者からの出向希望者数(部門別)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 設立時の組織に加えて、初年度になる2015年度の資金計画も明らかになった。総額38億6300万円の収入を予定して、そのうち35億円を電力会社からの特別会費でまかなう(図4)。この特別会費は各地域の販売電力量をもとに割り当てることになっているため、東京電力が約30%、関西電力と中部電力が15%前後、といった比率で分担する。

図4 初年度の資金計画。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 電力会社が拠出する特別会費は送配電部門が小売電気事業者から徴収する託送料金(送配電ネットワークの利用料)を原資にすることが想定されていることから、実際には小売電気事業者が販売量に応じて負担する形になる。特別会費の総額は2年目以降も毎年35〜40億円を見込んでいる。

第18回:「広域機関の需給調整システム、小売全面自由化に向けて10月から開発に着手」

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