電力の需給調整を担う「広域機関」、中立性を重視した体制とルール動き出す電力システム改革(13)

電力システム改革の第1弾を担う「広域的運営推進機関」が7月17日に発足した。組織の体制や意思決定のルールなどが大枠で決まり、2015年4月の業務開始に向けた準備が進んでいく。機関の重要事項を決定する総会の議決権は電力会社、小売事業者、発電事業者に3等分して中立性を維持する。

» 2014年07月18日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第12回:「電力会社からの契約変更を促進、スイッチング支援システムが2016年に」

 これから始まる電力システム改革が期待通りに進むかどうかは、ひとえに「広域的運営推進機関」(略称:広域機関)の実行力と中立性にかかっている。そのための主要な事項を決定する創立総会が7月17日に東京都内で開催されて、組織の中核を担う5人の役員の選任のほか、広域機関の運営に欠かせない定款や業務規定などを承認した。名称は「電力広域的運営推進機関」に決まった。

 従来は電力会社の役割だった送配電ネットワークの運営業務の一部を広域機関に移行することも業務規定の中に盛り込んだ。今後は2015年4月の業務開始まで、50社以上の事業者で構成する設立準備組合を通じて業務内容の詳細を詰めていく予定だ(図1)。電力会社の独占体制を変革するための第1段階が始まる。

図1 「電力広域的運営推進機関」の業務開始に向けた流れ。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 電気事業法の改正によって、すべての電気事業者は広域機関の会員になって運営に参画することが義務づけられている。現時点で対象になるのは「一般電気事業者(=電力会社)」「卸電気事業者」「特定電気事業者」「特定規模電気事業者(=新電力)」の4区分である。

 2015年4月に広域機関が業務を開始すると、重要事項は全会員が参加する総会で決議することになる。総会の意思決定をはかる議決権の数を事業者のグループごとに均等に配分して中立性を確保する方針だ。特定規模電気事業者を小売、一般電気事業者を送配電、卸電気事業者と特定電気事業者を発電の役割に位置づけて、3つのグループに対して同数の議決権を割り当てる(図2)。

図2 総会における議決権の配分(2015年4月以降に適用)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 小売・送配電・発電の各事業者グループが均等に議決権を持つことで、広域機関の重要な役割である全国レベルの需給調整機能を円滑に実施できるようにする狙いである。総会では過半数の賛成によって決議するほか、定款や業務規定の制定・変更には3分の2以上の賛成を必要とする。議決権の3分の1しか持たない電力会社だけでは意思決定ができない仕組みだ。

 広域機関の日常業務は総会の決議に基づいて、理事会と5つの部門で執行する体制になる(図3)。一般企業の取締役会に相当する理事会は理事長を筆頭に、理事3人と監事1人で構成する(監事には理事会の議決権がない)。

図3 「電力広域的運営推進機関」の体制。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 初代の理事長には、政策研究大学院大学の副学長を務める金本良嗣氏が任命された。金本氏は都市経済学や公共経済学が専門で、電力自由化政策にも精通している。3人の理事は発電・送配電・小売の各事業分野から1人ずつを選ぶことも定款で決まった。設立時点では発電事業者は電源開発、送配電事業者は東京電力、小売事業者はエネットの3社から理事を出す。

 広域機関が業務を開始して1年後の2016年4月には、小売の全面自由化が始まる予定だ。この時点で電気事業者の区分が変わり、発電・送配電・小売の3分野に集約する。現在のところ再生可能エネルギーなどを利用して発電設備を運営する企業は電気事業者に含まれないために、当初は広域機関の会員になる義務を負わない。小売の全面自由化と同時に発電事業者として広域機関の会員に加わることになる。

第14回:「電力会社から簡単に契約変更、小売事業者がワンストップで手続き」

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