2016年4月の小売全面自由化に合わせて、電気事業者の区分や対象を変更する。従来は発電設備を所有する一般企業や自治体などは電気事業者の対象ではなかった。今後は出力1万kW以上の発電設備を所有すると、電気事業者として届出が必要になり、供給計画の提出などが義務づけられる。
第15回:「電力会社に依存しない供給計画へ、広域機関が全事業者をとりまとめ」
政府が電力システムを改革する目的は大きく2つある。1つは自由な競争を促進して電気料金を抑制することであり、もう1つは数多くの事業者が連携することによって全国規模で電力を安定的に供給できるようにすることだ。供給力の点では発電事業者の拡大が欠かせない。
現行の電気事業法では、「一般電気事業者」と「卸電気事業者」だけが発電事業の規制を受けている。このうち一般電気事業者は10社の電力会社である。一方の卸電気事業者は出力が200万kWを超える大規模な発電設備を所有している場合で、実際には電源開発(J-POWER)と日本原子力発電の2社しかない(図1)。
小売の全面自由化を実施するために電気事業法を改正して、2016年4月から電気事業者の区分を機能別に変更する予定だ。電力会社を含めて「発電事業者」「送配電事業者」「小売電気事業者」の3つの区分に再編することになっている(図2)。
この場合の発電事業者には、規模の大きい発電設備を所有している企業や自治体などを想定している。資源エネルギー庁が出力1000kW以上の発電設備の運転状況を集計したところ、国内の供給力の19%に相当する5610万kWが非電気事業者によるものだった(図3)。その中には自家用の設備も数多く含まれているが、緊急時の供給力に加えることができれば電力不足の回避に生かせる。
現在のところ出力が1万kW以上の発電設備を対象に発電事業者を規定する案が有力である。1万kW以上の発電設備を合計すると、日本の供給力全体の97%をカバーすることができる。
ただし自由な競争や新規の参入を阻害しないように、規制は最低限にとどめる方針だ。事業の開始時に発電設備の概要などを経済産業大臣に提出する「届出制」を採用したうえで、毎年度の供給計画の提出と電力広域的運営推進機関への加入を義務づける。緊急時に経済産業大臣が発する供給命令にも従う必要がある。
発電事業者を規定するにあたって、電源の種類は問わない可能性が大きい。太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスといった再生可能エネルギーによる発電設備でも、出力が1万kW(=10MW)以上の場合には発電事業者の対象になる見込みだ。
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