「無駄なガス」電気に変わり利益生む、下水を使う鶴岡市自然エネルギー(1/2 ページ)

山形県鶴岡市は市内の下水処理場が生み出す「消化ガス」の利用に取り組む。水ing(スイング)と契約し、消化ガスを販売、得た利益を下水道の維持管理に全額用いる。水ingはガス発電機を導入し、固定価格買取制度を利用して収益を得る。市と事業者のどちらにもメリットがある事業だ。

» 2014年08月28日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 山形県鶴岡市は水ing(スイング)と協力し、下水処理場においてガス発電事業を立ち上げる。2014年8月に発電事業の基本協定を締結した*1)

 下水処理場には、有機物を含んだ水が大量に集まる。この有機物を取り除くことが下水処理場の主な役割だ。微生物を利用し、下水汚泥を経てメタン(CH4)や二酸化炭素(CO2)を主に含む消化ガスへと分解して除去できる。

 処理場から生まれた消化ガスは、メタンを大量に含むため、燃料になり得る。しかし、鶴岡市ではこれまで一部を消化槽の加温に使い、残りを焼却処分していた。今後、水ingに消化ガスを売却すれば捨てていたガスが財源に変わる。

*1) 鶴岡市は2014年5月に公募型プロポーザル方式による「鶴岡浄化センター消化ガス発電事業」を公告、2014年8月に優先交渉権者(水ing)を発表したもの。

民設民営方式で、市も事業者も利益

 「水ingが発電設備を置く市有地の賃借料と消化ガスの全量売却によって、年間約2500万円を得られると試算している。収益は全て下水道の維持管理に充てる」(鶴岡浄化センター)。

 今回の「鶴岡浄化センター消化ガス発電事業」では、BOO(Build Own Operate、民設民営)方式を取って事業を進める(図1)。BOOでは設備を公的部門へ譲渡することがない。東北地方初のBOOの事例だという。

図1 鶴岡市と水ingの関係 出典:水ing

 発電設備の導入費用や将来の維持管理費用は全て水ingが負担する。固定価格買取制度(FIT)を利用した売電も水ingが進める。鶴岡市は消化ガスを水ingに供給し、ガスの購入費と土地賃貸料の他、ガス発電機の冷却水が生み出した温水を受け取る形だ。温水は消化槽の加温に利用する。

図2 山形県鶴岡市とセンターの位置

 発電の舞台となるのは「鶴岡浄化センター」(鶴岡市宝田、図2)。市の推計人口13万4000人のうち、約8万人を対象とする処理場だ。1日当たり3万8800m3の水を処理し、2013年度には年間122万8161Nm3の消化ガスを生み出していた。

 浄化センターの敷地面積は6万9443m2と広大だ。このうち約300m2を水ingに貸し出す。「現在は未利用地であり、今後20年間は当センター側では利用しない。埋設物がないことも確認しており、設備を設置する際に問題はないだろう」(同センター)。

ガスエンジンで発電

 水ingが設置するのは出力25kWのガスエンジン。12台設置し、300kWを得る(図3)。年間想定発電量は一般家庭約560世帯分の200万kWhだ。設備利用率を計算すると76%になる。

 ガスエンジンが生み出した電気は、固定価格買取制度(FIT)を利用して20年間全量を東北電力に売電する。FITでは「メタン発酵ガス(バイオマス由来)」という分類になるため、買取価格として1kWh当たり39円(税別)が適用される予定。従って、売電収入は計算上年間7800万円になる。

図3 発電設備の完成予想図 出典:水ing
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