風力の揺らぎを吸収「蓄電池」、構造変えて900A蓄電・発電機器(1/2 ページ)

日立化成は、風力発電所などの出力変動を吸収する鉛蓄電池「LL1500-WS」を開発、2014年9月から販売する。電池1個から取り出し可能な電流を、従来の600Aから900Aに増やした。この結果、発電所に設置する蓄電池の数を減らすことができるという。

» 2014年09月09日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 「当社の蓄電池は風力発電所向けに6件、事業所向けなどに2件の納入実績がある。平均容量は6MWhと大きく、全ての案件で容量が3MWhを超えている」(日立化成)。

 日立化成は風力発電などの出力変動を緩和するための鉛蓄電池を開発、販売している。発電所で用いることを考えており、期待寿命は17年と長い*1) *2)

*1)風力発電では蓄電池の充放電がくり返されるため、満充電状態は好ましくない。そこで、ある程度の余裕を残しながら放電する。日立化成は容量の70%(放電深度70%)だけを用いて充放電した場合の寿命を示している。25度下で4500サイクルの充放電が可能であり、これは17年に相当するという。17年という数値は2006年に東北電力が蓄電池併設の変動緩和型風力発電の公募を開始した際に求められた期間だ。
*2) 新神戸テクニカルレポートNo.21(2011年3月)に掲載された「風力発電の出力変動緩和用制御弁式据置鉛蓄電池"LL1500-W形"」によれば、実機使用7年目における放電容量は定格容量の85%以上を維持できているという。なお、日立化成は2012年に新神戸電機を完全子会社化している。

必要な電池の数を減らしたい

 同社は2014年9月に新型鉛蓄電池「LL1500-WS」を発表、販売を開始した(図1)。冒頭で紹介した事例では同社が2009年に開発した「LL1500-W」を用いている。

 「LL1500-WSを開発した理由はこうだ。風力発電所などでは、瞬間的な出力変動を抑えたいという要望がある。1つ1つの蓄電池から取り出すことが可能な電流の量には上限があるため、どうしても多数の蓄電池を並列につなぐ必要がある。すると、電池の個数が増え、風力発電所で本来必要な容量以上のシステムになってしまう。蓄電池から取り出すことが可能な電流を増やして、蓄電池の個数を少なくしたかった」(日立化成)。

 従来品LL1500-Wの最大放電電流は600A、これを新製品のLL1500-WSでは900Aに高めた。期待寿命は17年を維持した。効果は大きい。同社は2つのシステム例で効果を示している。

 1MWの発電所で1時間放電可能なシステムを構築した場合、従来品を用いると蓄電池システムの容量は4.6MWh。新製品ではこれが3.8MWhに減る。蓄電池コストを約12%減らすことができる形だ。1MWの発電所でより大電流を流す場合にはさらに効果的だ。0.5時間放電可能なシステムでは蓄電池システムの容量が4.6MWhから3.1MWhに減少、蓄電池コストは約28%減る*3)

 「10MWhクラスのシステムでは従来製品が約3500個必要だった。新製品を使うと、これが2000〜3000個に減る。単価は新製品の方が高いものの、個数が減る効果の方が大きく、システムコスト低減に効く」(日立化成)。

*3) 必要な蓄電池の個数が減るため、設置スペースや重量も減る。設置コストなどの低減につながる。前者(1時間放電)の場合、設置スペースは約16%、蓄電池重量は約15%減る。後者(0.5時間放電)では、それぞれ約28%、約31%減る。

図1 900Aを取り出し可能な鉛蓄電池「LL1500-WS」 出典:日立化成
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