太陽光の先進県がバイオマスで全国1位、木質から廃棄物まで燃料にエネルギー列島2014年版(23)愛知(1/2 ページ)

愛知県の沿岸地域では太陽光や風力に続いてバイオマス発電のプロジェクトが続々と始まっている。太平洋に突き出た知多半島には日本最大の木質バイオマス発電所を建設中だ。さらに地域で大量に発生する生ごみや下水からメタンガスを生成して発電する取り組みも官民連携で進む。

» 2014年09月16日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 日射量が豊富な愛知県では住宅用の太陽光発電が活発で、都道府県別の導入量では常に全国のトップを走っている。太平洋に面した沿岸地域では風力発電のプロジェクトも始まる一方で、このところバイオマス発電の動きが急速に広がりを見せている。

 中でも注目を集めるのが、知多半島の半田市に建設する「半田バイオマス発電所」である。大規模な火力発電所が集まる衣浦港(きぬうらこう)の沿岸に、バイオマスでは国内最大の規模になる75MW(メガワット)の発電設備を建設する計画だ(図1)。住友グループが約200億円の事業費をかけて、2016年度中に運転を開始する。

図1 「半田バイオマス発電所」の建設予定地(上)、発電設備のイメージ(下)。出典:サミットエナジー、住友重機械工業

 燃料には木質バイオマスを利用する予定で、間伐材などを加工した木質チップのほかに、海外から輸入するパームヤシ殻も加える。年間の想定発電量は明らかになっていないが、バイオマス発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を標準の80%で計算すると、5億kWhを超える発電量になる。一般家庭で14万世帯分の電力に匹敵する規模で、半田市の総世帯数(約4万8000世帯)の3倍に相当する。

 半田バイオマス発電所の建設予定地から港をはさんで対岸には「衣浦東部浄化センター」がある。この下水を処理する浄化センターでもバイオマスの取り組みが進んでいる。愛知県が下水汚泥の燃料化施設を2012年から稼働させて、火力発電用の燃料を製造している(図2)。

図2 「衣浦東部浄化センター」の下水汚泥燃料化施設(上)、事業スキーム(下)。出典:愛知県、メタウォーター

 周辺の自治体からも送られてくる下水を処理する過程で、メタンを豊富に含む汚泥が大量に生まれる。従来は焼却して処分していたが、乾燥させて炭化物を作れば、石炭と混ぜて火力発電の燃料に使えるようになる。

 衣浦東部浄化センターで発生する汚泥は1日あたり100トンにものぼり、愛知県全体の汚泥量の5分の1を占める。この汚泥から1日に約8トンの炭化物を製造できるようになった。年間の発電量に換算すると460万kWhになり、一般家庭で1270世帯分の電力に生まれ変わる。

 バイオマス燃料と石炭を組み合わせた混焼発電は、衣浦東部浄化センターと同じ碧南市(へきなんし)にある中部電力の「碧南火力発電所」で実施している(図3)。碧南火力発電所では下水汚泥よりも前に、木質バイオマスを利用した石炭混焼発電を2009年に開始した。

図3 「碧南火力発電所」の全景(上)、木質バイオマス混焼発電のイメージ(下)。出典:中部電力

 年間に約30万トンの木質バイオマスを利用して2〜3億kWhの電力を供給することができる。国内のバイオマス混焼発電では最大の規模である。さらに下水汚泥を加えて、2種類のバイオマスによる石炭混焼発電を実施中だ。

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