2400kmを直流で送る、原発3基分の電力電力供給サービス(2/3 ページ)

» 2014年09月19日 19時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

より遠く、より大容量に

 ABBは全世界で約90件、合計95GW相当のHVDCプロジェクトを手掛けており、全世界のHVDCのシェアの約5割を占めているという。

 同社は新技術の開発も進めている。ブラジルへの納入と前後して、地中・海底送電に向く新しいケーブルシステムを開発したことを発表した(図3)。ケーブル1本当たりの送電可能容量を従来の2倍に高めたことが成果だ。1組のケーブルで200万世帯が利用する電力を送電できるという。

 容量が従来の100万kWから260万kWに増えた他、送電損失を5%以下に保つことができるケーブルの最大長を1000km以下から1500km超に伸ばした。電流は従来の3125A(アンペア)から5000Aに向上している。

図3 ケーブルシステム実験設備の様子 出典:ABB

電圧を高めると何が起こる

 性能を高めるための技術的な改良は高電圧化にある。従来32万Vだった送電電圧を64%高めて52万5000Vとした。オーストリアBorealisと共同で開発した「架橋ポリエチレン(XLPE)絶縁体」を採用することで、高い電圧に耐えられるようになったという。

 図4にHVDCケーブルの断面図を示した。ケーブルは中心部にある電力を伝える導体(金属)の抵抗によって発熱するため、熱をケーブルの外皮から自然に放出する仕組みを採った。「図4中の白い部分が絶縁体であり、外側の黒い部分が機械的な強度を保つためのさや(シース)、中央の銀色の部分が導体(アルミニウム)だ。導体の表面に当たる黒い部分を半導電層と呼ぶ、電圧のストレスを緩和する役目がある」(ABB)。

 絶縁層の材料には機械的な強度、熱に対する強度の他、電気的・化学的に最適な材料を選定したという。熱に対する強度が必要な理由はこうだ。

 「今回採用した白い絶縁体層は、高電圧に耐える絶縁性能を備える他、熱伝導能力を高めて導体の熱を外部に運ぶ役割と、高温時でも軟らかくならずに機械的な強度を保つ役目がある。これまでの材料には高い電圧に耐えられなかった。絶縁性能を高めるために厚みを増やすと、熱がこもり、軟らかくなって最悪の場合溶けてしまう」(ABB)。このため、耐熱性が高く、熱をよく伝え、耐電圧性能の高い材料を開発したという。

図4 HVDCケーブルの構造 斜めから見たところ(左)と正面から見たところ 出典:ABB

 開発ポイントはもう1つある。ケーブルの末端やケーブルを接続するときに起こる課題に対応したことだ。

 「ケーブル終末端末部と接続部では、絶縁体が中断して大気に触れる。すると電界集中が起き絶縁破壊(ショート)に至りやすい。当社は電界集中が起きないように電界を緩和するような材料(ストレスコーン、図5の黄色い部分)を開発しケーブルの接続を可能にした」(ABB)。

図5 ケーブルを接続する際の問題を防ぐ構造 出典:ABB

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