2400kmを直流で送る、原発3基分の電力電力供給サービス(3/3 ページ)

» 2014年09月19日 19時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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交流の方が有利ではなかったのか

 日本国内では長距離送電に高圧の交流を用いている。発電所が生み出した電力をいったん所内で50万Vまで高めた後に長距離送電し、変電所で例えば15万4000Vへ、次に6万6000へV、さらに6600V、100Vと順次降圧している。電圧が高いほど送電ロスが減るため、なるべく高い電圧を保ちながら需要地に送り届ける工夫を凝らしている。

 電流が送電線を流れるとき、銅などの電気抵抗によって発熱する。これが損失の正体だ。電流が多いほど発熱量が増えるため、電流を少なくすればよい。電力を一定にしたとき、電圧と電流は反比例するため、電流を少なくする目的で電圧を高くする。

 直流電流でも損失の課題は残る。しかし、交流のもつ3つの欠点から逃れることが可能だ。第1の欠点は電圧だ。100Vの交流は最大電圧が157Vに達する(−157V〜157V)。従ってケーブルの絶縁性能を100Vの直流よりも高めなければならない。直流ではケーブルの体積当たりに送電できる電力が交流よりも多くなる。

 第2の欠点は誘導抵抗(リアクタンス)だ。コイルに交流電流を流した場合に顕著に現れるが、送電線にも存在する。第3の欠点は誘電損失だ。分子内部に電荷の偏りがある物質(誘電体)では、交流の電場の変化に完全には追従できず、エネルギーの一部が熱に変わる。

 直流の欠点は2つある。効率が高い変圧器を製造しにくいこと、電流を単純な仕組みで遮断できないことだ。交流送電が一般化した理由の1つは、直流ではこれらの欠点を初期に克服できなかったことだ。しかし、ABBの事例から分かるように高電圧大電流の直流に対しても変圧器、遮断機が量産されており、交流の優位性は下がったといえるだろう。

全国の系統を結び付ける働きも

 高圧直流送電には長距離送電以外の用途もある。互いに同期していない交流系統同士を接続する、さらには周波数の異なる交流系統同士を接続する際に役立つ。日本国内では50Hzの系統と60Hzの系統を結び付ける周波数変換所で、交流をいったん直流に変換し、再度交流に変換している。例えば中部電力(60Hz)と東京電力(50Hz)の系統を接続する東清水変電所(静岡市清水区)には、30万kWを変換する能力を備えた設備がある。

 周波数変換所の設備能力を早期に200万kW規模で増強する計画(図6)があるものの、海外企業の技術を導入する機運はないようだ。実績のある先進的な技術を取り入れ、信頼性が高く低コストな設備導入を試みるべきではないだろうか。

図6 9つの一般電気事業者を結ぶ連系設備 出典:エネルギー白書2014の図版を一部編集

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