九州の再生可能エネルギーに急ブレーキ、発電設備の接続を保留する事態に電力供給サービス

九州電力は再生可能エネルギーによる発電設備の接続申し込みを本日9月25日から数カ月間にわたって保留する。固定価格買取制度によって太陽光発電が急増した結果、電力の需給バランスが崩れる可能性が生じたためだ。とはいえ太陽光と風力以外の発電設備を保留の対象に加える必要性はない。

» 2014年09月25日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 現実に九州の太陽光発電設備は急増している。2014年5月末までに固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備の容量は1782万kWに達して、夏の電力需要のピーク(約1600万kW)を上回る状況になった(図1)。すべての発電設備が同時に最大出力を発揮できるわけではなく、あくまでも計算上だが、電力の安定供給に影響を及ぼしかねない事態であることは間違いない。

図1 地域別の太陽光・風力発電の認定設備容量(2014年5月末時点)。出典:九州電力

 再生可能エネルギーの発電設備が抱える最大の問題は、太陽光や風力による出力が天候の影響を受けて大きく変動することだ。電力は需要と供給を常に一致させる「同時同量」が原則で、これが崩れると周波数が不安定になり、最悪の場合には大規模な停電を発生させる可能性がある。

 ただし地熱やバイオマスは出力が安定しているため、このような問題を生じない。水力発電も天候による出力の変動は小さい。ところが九州電力は太陽光や風力に限らず、すべての再生可能エネルギーを対象に加えて、発電設備の接続申し込みを保留することに決めた。例外は出力が10kW未満の住宅用の太陽光発電設備だけである。

 すでに接続の申し込みを完了している場合でも、出力が50kW以上で「系統連系承諾通知書」の送付を受けていない発電設備は保留の対象に含まれる。九州電力によると、2014年7月末の時点で送配電ネットワークに接続済みの発電設備は約390万kWで、接続を申込中の発電設備は約870万kWある(図2)。両方を合わせると約1260万kWになり、需要が少ない時期の昼間の電力(約800万kW)を大幅に上回ってしまう。

図2 九州電力に対する太陽光・風力発電の申込状況(画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 こうした状況をふまえて、九州電力は今後の接続可能量を見極める検討に「数カ月」を要するとして、その間の接続申し込みを保留する。しかし本来は2014年の早い時期に想定できていたことで、もっと早く検討を開始していれば、発電事業者に対する影響も少なくて済んだ。対応の遅さは批判されてしかるべきだろう。

 今回の保留に先立って九州電力は7月26日から、長崎県と鹿児島県の6つの離島を対象に、同様の措置を1年間にわたって実施中だ。九州全域で再生可能エネルギーの導入に急ブレーキがかかることになり、送配電事業者としての九州電力の責任は重い。

 特に地熱やバイオマスのように出力が安定している発電設備であれば、既設の火力発電所の運転を停止してでも接続を受け入れることが望ましい。需給バランスの問題だけを考えると、原子力発電所を再稼働させる必要性が問われることにもなる。今後さらに他の地域にも波及する可能性があり、日本のエネルギー供給体制の改革に向けて深刻な状況と言える。

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