木質バイオマス発電に35億円の協調融資、島根県で2万4000世帯分の電力自然エネルギー

林業が盛んな島根県の江津市で大規模な木質バイオマス発電プロジェクトが進行中だ。地域の間伐材などを利用して、発電能力が10.8MWのバイオマス発電所を建設する。地元の金融機関などによる総額35億円の協調融資も決まり、2015年4月の運転開始を目指す。

» 2014年10月09日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 島根県が森林整備と林業再生を図るために、県内産の木質バイオマスを利用する発電事業に対して補助金などの支援策を実施している。その1つに選ばれたのが「しまね森林発電」によるプロジェクトである。このほど三菱UFJリースと地元の金融機関が総額35億円にのぼる協調融資を組成して資金を提供することも決まった。

 しまね森林発電はコージェネレーションシステム事業を展開するエネ・ビジョンが2013年7月に設立した専門会社で、江津市(ごうつし)の工業団地の中に木質バイオマス発電所を建設する計画である。地域の森林から派生する間伐材や林地残材などを利用して、10.8MW(メガワット)の発電規模を予定している(図1)。

図1 「しまね森林発電」の木質バイオマスプラント。出典:エネ・ビジョン

 運転開始は2015年4月を目指している。年間の発電量は8600万kWhを想定していて、一般家庭で2万4000世帯分の電力使用量に相当する。江津市の総世帯数(約1万1600世帯)の2倍以上に供給できる規模になる。発電した電力は固定価格買取制度を利用して電力会社などに売電する方針だ。

 燃料には間伐材など未利用木材のほかに、海外から輸入したパームヤシ殻(PKS)を加えて混焼させる。PKSによるバイオマス発電の買取価格は未利用木材よりも低くなることから(図2)、年間の売電収入は最大で約24億円を見込んでいる。これに対して設備投資額は約44億円になる想定で、金融機関による協調融資や県の補助金を充当する。

図2 バイオマス発電の買取価格。出典:資源エネルギー庁

 バイオマス発電は再生可能エネルギーの中でも安定した電力を供給できるメリットがある。太陽光や風力と比べて発電効率も高く、地域の分散型電源として全国各地で導入プロジェクトが活発になっている。しまね森林発電の木質バイオマスプラントでは設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)が91%に達する。

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