再生可能エネルギーの接続可能量、バイオマスよりも原子力を優先法制度・規制

九州電力をはじめとする電力会社の接続保留を受けて、政府の委員会が再生可能エネルギーの接続可能量を算定する方法の検討を進めている。年間の発電量や出力の安定性を重視して接続可能量を拡大させる方針で、ベース電源に位置づける水力と地熱を原子力とともに優先させる。

» 2014年11月07日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 経済産業省は2014年6月に「新エネルギー小委員会」を設置して、有識者を中心に再生可能エネルギーの課題を検討してきた。11月5日に開催した第6回の会合では、懸案の接続保留問題について解決策を議論した。再生可能エネルギーの接続可能量が限界に近づいてきたと主張する電力会社が増える状況にあって、各地域の接続可能量を適切に拡大させる方策が焦点になる。

 重要な検討課題は2つある。1つは電力会社の算定する接続可能量が発電設備の容量(kW)をベースにしているのに対して、委員会の案では発電電力量(kWh)をもとに接続可能量を算定する方向だ。容量あたりの発電電力量の大きい設備を増やしたほうが接続可能量を拡大しやすいからである。

 5種類の再生可能エネルギーのうち、地熱とバイオマスは設備利用率(容量に対する実際の発電電力量)を80%と想定する一方、中小水力は60%、風力(陸上)は20%、太陽光は12%として年間の発電電力量を算出する(図1)。出力の安定性も加味するが、バイオマスは「燃料の確保状況等に依存」することを注記した。

図1 再生可能エネルギーの買取価格・買取期間と年間発電電力量(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 もう1つの検討課題は地域全体の発電量が需要を上回る状況になった場合に、どの種類の電源を優先させるのか、「優先給電」のルールを決めることである。政府の基本方針は2014年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」に示されている。出力が安定している「ベース電源」を最優先にして、その次は出力の調整が可能な「ミドル電源」、最後にコストが高い「ピーク電源」の順になる(図2)。

図2 電力需要に対応した電源構成の考え方。出典:経済産業省

 エネルギー基本計画では再生可能エネルギーを最大限に導入する方針に基づいて、太陽光と風力を火力発電よりも優先させることにしている。地熱と水力(ただし揚水式を除く)はベース電源に位置づけて、原子力とともに最優先する。バイオマスは火力と同等の扱いで、再生可能エネルギーの中では優先度が最も低い。

 こうした優先給電のルールが適切かどうかも今後の論点になるが、変更する可能性は小さい。その結果、再生可能エネルギーよりも原子力を優先させる政府の方針が明確になる。原子力発電所の再稼働時期が最も早くなる見込みの九州電力が先頭を切って再生可能エネルギーの接続保留に乗り出したのも、偶然とは考えにくい状況だ。

 政府の委員会が示した接続可能量を算定するための基本的な考え方を見ても、原子力を含めてベース電源を過大に評価している。算定のベースになる設備利用率を「震災前過去30年間」の長期で平均値をとって計算する(図3)。運転開始から30年を経過した古い原子力発電所でも設備利用率は高めに出ることになる。

図3 再生可能エネルギーの接続可能量を算定する基本的な考え方(画像をクリックすると拡大)。出典:経済産業省

 一方でバイオマスはミドル電源の扱いになり、最低出力まで調整することが前提だ。再生可能エネルギーを最大限に導入するためには、地熱と水力に加えてバイオマスを最優先にして、その次に原子力を位置づけるのが妥当である。エネルギー基本計画でも次のように宣言している。「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」。

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