黒潮が流れるエネルギーの宝庫、海流発電とメタンハイドレートもエネルギー列島2014年版(30)和歌山(2/2 ページ)

» 2014年11月11日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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海洋エネルギーの実証フィールドの候補地に

 さらに太陽光に続く未来の再生可能エネルギーとして有望視されているのが海洋エネルギーである。日本の近海を流れる黒潮は和歌山県の南側に膨大なエネルギーを生み出す。紀伊半島の南端にある潮岬(しおのみさき)の沖合では、黒潮の流れを生かした「海流発電」の計画がある。

 海流発電は潮の満ち引きを利用する「潮流発電」とは別で、時刻に関係なく海流の安定したエネルギーを得られる点が特徴だ。水深5メートルの海中で秒速1メートル以上の流速が必要になり、潮岬の沖合は日本の近海では最適な場所の1つである(図5)。政府が選定した海洋エネルギーの実証フィールドの候補地に潮岬沖が挙げられて、地元の串本町が海流発電の実証実験に取り組む準備を進めている。

図5 日本近海の海流エネルギー。出典:NEDO

 同じ潮岬沖ではメタンハイドレートの資源調査も始まっている。国が実施した調査によって紀伊半島の沖合の海底でメタンハイドレートの存在が確認されているが、和歌山県みずから漁業調査船を使った資源調査を2013年から開始した。海底の浅い層にあるメタンハイドレートから発生する「メタンブルーム」と呼ぶガスの気泡を、高性能の魚群探知機を使って確認する調査方法である(図6)。

図6 メタンハイドレートの資源調査に使う漁業調査船「きのくに」。出典:和歌山県商工観光労働部

 これまでに潮岬の沖合15キロメートルの海底で、複数回にわたってメタンブルームを確認した。今後もメタンブルームの観測を続けながら、国産の天然ガスとして期待がかかるメタンハイドレートの有望な生産地域として国や事業者にアピールしていく。将来に向けて潜在量の大きい海洋エネルギーで日本の先頭を走る意気込みだ。

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