水素ステーションに規制緩和、コストダウンが可能に法制度・規制

経済産業省は2014年11月20日、圧縮水素スタンドの技術基準を改正したと発表した。水素普及を目指す規制緩和の一環である。液体水素をスタンド内に保管できるようになる他、より小さなスタンドを安価な材料で作り上げることが可能になる。

» 2014年11月25日 12時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 経済産業省は2014年11月20日、圧縮水素スタンドの技術基準を改正したと発表した。水素普及を目指す規制緩和の一環である。高圧ガス保安法の省令(一般高圧ガス保安規則)などが対象だ。

図1 水素ステーションの主な方式 出典:水素供給・利用技術研究組合

 図1に水素ステーションの主な方式を示した。オフサイト方式はステーション外部で水素を製造し、トレーラーなどで運び込むもの。オンサイト方式はLPGや都市ガスなどの原料をステーションに導き、ステーション内部で水素を製造する方式。

 経済産業省の改正の内容の対象は主に3つある。液化水素貯槽、付属冷凍設備、複合材料を使用した蓄圧器だ。

 液化水素貯槽に関する改正は、オフサイト方式のステーションで役立つ。図1では圧縮水素を輸送しているものの、体積を水素ガスの約800分の1に抑えるため、液体水素を用いることもある。例えば、ガソリン車の燃料代よりも安価に水素を供給することを発表した岩谷産業は、主に液体水素の形で供給する(関連記事)。

 今回の改正により、液体水素の形で外部から供給を受けた後、そのまま液体水素を保管できるようになる。安全対策として4つの技術基準*1)を定め、適合した場合に保管が可能になる。

*1) 液化水素の貯槽に取り付けた配管に遮断措置を講ずること等の安全対策、液化水素の貯槽及び蒸発器とディスペンサーとの間に障壁を設置すること等の配置等に関する技術基準、液化水素の通る部分から火気を取り扱う施設までの距離及び液化水素タンクローリーから敷地境界までの距離等に関する技術基準、圧縮水素スタンドの保安統括者に関する基準。

燃料電池車に充填する直前に必要な設備も

 燃料電池車に水素を3分間で満充填するには、急速に高圧で水素を送る必要がある。すると断熱圧縮が起こり、充填後の水素の温度が高くなりすぎる。そこで、図1の蓄圧器から取り出した水素をディスペンサーに導く直前に−40度まで温度を下げる設備「付属冷凍設備(プレクール設備)」を使う。

 これまでの基準ではプレクール設備と公共施設などに間に一定の距離を確保しなければならなかった。都市部の限られた敷地では、この距離の確保が困難な場合がある。そこで、冷媒ガスが不活性ガスであることなどの条件を満たす設備については、設備距離の確保を不要とした。

 敷地面積が小さくできると、初期コストが低くなり、適地が増える。水素ステーション普及に適した改正だ。

高圧ガスを容易に保管できる

 図1にある蓄圧器と呼ばれる設備は、いわゆる「ボンベ」だ。高圧の水素を蓄えるために用いる。改正前の基準では蓄圧器の材料は鋼か非鉄金属を用いることになっていた。これらの金属は水素を吸収(吸蔵)する性質があり、吸蔵すると水素脆化という現象が起き、もろくなる。これを防ぐために高価な金属材料を利用する必要があった。

 改正後は繊維強化プラスチック(複合材料)を使用した蓄圧器の利用が可能になる。輻射熱や紫外線、雨水などによる劣化を防止する措置などについて、技術基準を設けた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.