80年も動き続ける水力発電所を拡張、余った水で新たに27.5MWの電力自然エネルギー

新潟県内で1934年から稼働している水力発電所の下流に、さらに大きな出力の水力発電所を建設する計画が動き出した。既存の発電所で使いきれない水が豊富にあるため、取水設備と発電設備を新設して最大27.5MWの電力を作り出す。環境影響評価を経て2022年に運転を開始する予定だ。

» 2014年12月03日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 「新姫川第六発電所」の実施区域。出典:黒部川電力

 水力発電所を新設する場所は、長野県から新潟県の糸魚川市(いといがわし)へ流れる姫川(ひめかわ)の下流にある(図1)。水量が豊富な姫川の流域には数多くの水力発電所が稼働中で、その1つに「姫川第六発電所」がある。80年前の1934年に営業運転を開始した。発電能力は最大で26MW(メガワット)を発揮する(図2)。

 この古い水力発電所は今後も従来と変わらず運転を続けていくが、発電用の水を貯める取水堰(しゅすいせき)には使いきれない水量がある。その余った水を利用することで、さらに大きな発電能力の「新姫川第六水力発電所」を建設する計画だ。

図2 運転中の「姫川第六発電所」。出典:黒部川電力

 既存の水力発電所が最大で毎秒28立方メートルの水量を利用しているのに対して、新設する発電所は毎秒30立方メートルまで使うことができる。これにより最大で27.5MWの電力を作り出せる。2つの発電所を合わせると従来の2倍強の供給力になる。

 新設の水力発電所は5キロメートルほど下流に建設する。既存の発電所の取水堰から導水路を敷設して、山中に設置する水槽に貯めた水を発電所に流し込む方式だ(図3)。発電に利用した水は川に戻すが、この間の取水堰から放水口までの水量が従来よりも減ることになる。

図3 新設する発電設備の全体イメージ(上)、断面(下)。出典:黒部川電力

 発電所を建設・運営する黒部川電力は環境影響評価を実施するために、その方法書を12月1日に経済産業大臣に届け出た。周辺地域の大気や水質をはじめ、動植物などの生態系を含めて影響を調査して国や地元の自治体に報告する。

 環境影響評価のプロセスが順調に進むと、4年後の2018年12月に建設工事を開始できる見込みだ。取水口や導水路を含めて発電設備全体の工事に3年強の期間を想定していて、運転開始は2022年4月を予定している。自然環境に影響を与えないことが実証できれば、新たな再生可能エネルギーの導入方法になる。

 黒部川電力は新潟県と長野県に5カ所の水力発電所を運営して、年間の総発電量は3億6000万kWhにのぼる。発電した電力は卸供給事業者として北陸電力に供給する。1923年(大正12年)の創業で、現在は北陸電力と電気化学工業が50%ずつ出資している。

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