ニュース
» 2014年12月09日 14時50分 UPDATE

蓄電・発電機器:国内需要に匹敵するリチウム、2万トン弱をアルゼンチンで確保

年間生産量1万7500トンという大規模なリチウムの製造がアルゼンチンで始まる。これは日本全体の消費量に匹敵する規模だ。100%の販売代理権を持つ豊田通商は全世界にリチウム資源の販売を開始、2015年1月には日本への出荷を開始する。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 豊田通商は2014年12月、アルゼンチンでリチウムの本格生産を開始したと発表した(図1)。炭酸リチウム(Li2CO2)換算で年間1万7500トンの生産を目指す。「現地の埋蔵量は炭酸リチウム換算で640万トン」(豊田通商)。このため、鉱山としての寿命は約40年にも及ぶ。アルゼンチンにおける日本企業初のリチウム開発事業だ。

yh20141209Toyotat_tape_590px.jpg 図1 開所式の様子 出典:豊田通商

 「2012年時点で炭酸リチウムの生産量は約20万トン。これを金属リチウムに換算すると約3万7000トンに当たる。国内の金属リチウムの需要量は3000トンだ」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構、JOGMEC)。従って今回のリチウム生産量は国内需要に匹敵する大規模なものだということができる。

探査から5年で生産にこぎ着ける

 「当社は2009年から開発に適したリチウム資源の探索を続けてきた」(豊田通商)。その結果、アルゼンチン北西部のフフイ州にあるオラロス塩湖(Salar de olaroz)を選んだ。2010年1月には同地で100%の権益を所有していたオーストラリアの資源開発企業であるOrocobreと共同でリチウム資源開発事業化調査を開始。2012年12月にはフフイ州から開発許認可を受け、採掘権を確保。開発プロジェクトを進める事業会社のサレス・デ・フフイ(Sales de Jujuy)に25%出資する形を採った。このときJOGMECは豊田通商が民間から調達した資金約1億9200万ドルのうち、82%に対して債務保証を付与している。

 2013年8月にはオラロス塩湖からかん水(金属炭酸塩などを含んだ水)の汲み上げを開始。炭酸リチウムを精製する工場を建設し、実証を続けてきた。「汲み上げたかん水を何度も天日干しにして、不純物を除去し、炭酸リチウムを取り出す」(同社)。

 豊田通商は精製工場が製造した炭酸リチウムの100%販売代理権を取得しており、日本を含む全世界に販売する。日本への初出荷は2015年1月ごろを予定する。

どのような場所なのか

yh20141209Toyotat_olaroz_309px.jpg 図2 オラロス塩湖の外観 出典:JOGMEC

 フフイ州はアルゼンチンが北のボリビア、西のチリと接する位置にある。州南東部の一部の地域を除くと、アンデス山脈の高地が全面に広がる。

 アンデス山脈はナスカプレートが南アメリカプレートの下に潜り込むことによって形成された世界最大の褶曲山脈。フフイ州の緯度では高度3000mを超える山脈が幅300km程度広がる。アンデス山脈は単一の稜線からなるのではなく、南北に延びる多数の稜線が入り乱れた形をしている。

 オラロス塩湖は、峰と峰の間の谷間に炭酸リチウムなどが堆積した構造であり、東西の峰の間に水面のような白い平原が広がる(図2)。湖は南北方向に長い楕円形、規模は南北20km、東西10km程度。

 図3に南アメリカ大陸の地形図を示した。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスは全体図の左下、黒い四角の位置。図左を南北に延びる灰色の部分がアンデス山脈だ。山脈のうち、赤枠で囲んだ部分を図右に拡大して示した。拡大図の中央にある赤い四角の位置にオラロス塩湖が横たわる。チリ国境まで30km、ボリビア国境まで80kmという立地だ。

yh20141209Toyotat_map_590px.png 図3 南アメリカ大陸の地形

 オラロス塩湖の標高は3900m。富士山頂よりも高い。「輸出先に従って、太平洋側のチリの港湾か、大西洋側のブエノスアイレスまで陸送し、積み出す」(豊田通商)。

なぜリチウム生産が重要なのか

 リチウムは高性能な蓄電池に欠かせない希少元素だ。米エネルギー省が公開した報告書「2011 Critical Materials Strategy」でも希少で重要な元素だと表現されている。クリーンエネルギー技術に関する開発・製造で重要な16の元素のうちの1つであり、2015年から2025年においては重要度が4段階評価で上から2番目に高い「3」、供給リスクが同「2」と評価されている(関連記事)。

 リチウム資源の課題は産出量が少ないことに加えて、産出国が偏っていること。2011年の産出量を見ると、チリが37.8%、オーストラリアが36.7%、中国が12.1%、この3カ国で世界生産量の4分の3を超える。このため、米国(関連記事)やボリビア(関連記事)など世界各地でリチウムの資源開発が進んでいる。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.