日本が認めるスイスの技術、直流で効率良く送電できるHVDC電力供給サービス(1/2 ページ)

日立製作所とスイスABBは2014年12月16日、国内向けに高圧直流送電(HVDC)事業を展開するための合弁会社を設立することに合意したと発表した。日立製作所の営業ネットワークやプロジェクトマネジメント能力を、ABBの先進HVDC技術と組み合わせることで、再生可能エネルギーの大量導入や、国内の電力系統強化に役立てる。

» 2014年12月18日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 日立製作所とスイスABBは2014年12月16日、国内向けに高圧直流送電(HVDC: High Voltage Direct Current)事業を展開するための合弁会社を設立することに合意したと発表した。日立製作所が51%、ABBが49%を出資する。「2015年4月に合弁会社を設立し、年間10〜20億円の売上を目指す」(日立製作所)。

 交流ではなく、直流で大電力を送電する理由はこうだ。「(空中に送電線を引く)架空線を用いて、1000km送電した場合に交流送電の損失は9%。直流送電(HVDC)だとこれを7%に抑えることができる」(日立製作所)。損失が低いだけでなく、HVDC技術を用いると、装置の設置面積を抑えることができ、建設コストも低くなるという。

 図1にABBの発表資料を示す。図では2.6GW(260万kW)の電力を直径12cmの専用HVDCケーブル2本で送電できることを示している(5万2500V、5000A)。これはフランスの首都パリ市を賄うことができる容量だ。ABBによれば、1500kmを送電しても送電損失は5%以下だという。北海道から九州までに匹敵する距離だ。

図1 HVDCの送電能力 出典:スイスABB

一休みしていたHVDCプロジェクトが大規模に立ち上がる

 HVDCは全くの新規技術ではない。国内では2006年までにHVDC技術を使った大規模なプロジェクトが9つあった。「北海道電力の系統と東北電力の系統を海底で接続する北海道・本州間電力連系設備(北本連系設備)や、中部電力と東京電力の間で60Hzの系統と50Hzの系統を接続するプロジェクトだ。当社はこれら全てのプロジェクトに参画している」(日立製作所)。

 2006年から現在に至るまで国内では新たな大規模HVDCプロジェクトが立ち上がらなかった。だが、政府の電力システム改革では連系線や広域送電線の整備計画を策定することが決まっている。整備計画は具体化しており、例えば、2019年には北本連系設備の能力を現在の60万kWから90万kWに高める予定だ(関連記事*1)

 この他にもHVDC技術の適用範囲が広がっていく。陸上はもちろん、洋上風力発電など大規模な再生可能エネルギーの導入が計画されているからだ(図2)。地中や海底の送電では、交流送電よりも直流送電のメリットがより高くなる。

*1) 日立製作所は明言しなかったものの、3段階で進む電力システム開発では2018年以降、発送電の中立化(分離)も進み、これまではなかった広域的な電力融通が広がるはずだ(関連記事)。そこでもHVDC技術が役立つ。

図2 HVDC技術の適用範囲 出典:日立製作所

 国内市場が拡大する見込みがあるにも関わらず、実績のある日立製作所が合弁会社設立に動いた理由は何だろうか。ABBのもつ新技術だ。

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