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» 2015年01月07日 16時30分 UPDATE

太陽光発電開発戦略:安価な電源を大量導入、その夢をかなえるのか太陽光 (1/2)

太陽光発電の最終目標は、既存の大規模発電所を一部肩代わりすることだ。そのためには固定価格買取制度(FIT)に頼らなくても自立できるよう、さまざまな欠点を解消する必要がある。まずは発電コストの引き下げだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が5年ぶりに策定した新しいロードマップ「太陽光発電開発戦略」の内容を紹介する。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 太陽光発電は万能ではないものの、現在の電力システムの一部を肩代わりする潜在能力を持っている。最大の特徴は発電用燃料を海外から輸入する必要がないことだろう。そもそも燃料が不要だ。発電時に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化対策にも役立つ。

 大規模化にも適する。太陽電池を大量生産したとしても、希少資源の問題はほとんど起こらない*1)。電卓を動かすような小規模な太陽電池から、数百MWの規模まで自由に設計でき、小規模なものも、大規模化なものも発電性能はあまり変わらない。これは立地条件を選ばないという利点につながる。

*1) シリコン太陽電池の生産規模がさらに拡大していくと、セルの受光面電極に少量利用している銀ペーストが課題になる。銅ペーストや、そもそも受光面電極を利用しない構造など技術的な開発が進んでいる。

4つの課題がのしかかる

 だが、現在の太陽光発電技術には大きな欠点もある。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が5年ぶりに策定したロードマップである「太陽光発電開発戦略」(2014年9月公開)では、4つの課題を挙げている。

 第1にシステム設置から廃棄までを考えた際の発電コストが、国内ではいまだ火力発電を置き換えるほどには安くなっていない。理由は3つある。まずは、太陽電池のエネルギー変換効率が10〜20%であること。太陽光のもつエネルギーの大半を捨てている。次に設備利用率だ。エネルギー源が太陽であるために、24時間最大出力で動かし続けることができない。平均すると最大出力の12%程度である。最後に土地利用率だ。建物の屋根など他の用途に使いにくい「土地」を生かさない限り、土地のコストが発電コストに直結する。

 第2は出力が変動しやすいことだ。季節や時間帯による変動に加えて、天候の影響を大きく受ける。第3に太陽光がもつエネルギーが「薄い」ことだ。面積1m2当たり、最大でも約1kWである。太陽電池の変換効率を30%まで高めることができたとしても、1m2の土地から得られる電力は最大300W。さらに地域(立地)によってはこれよりも少ない。

 第4の欠点は製造コスト。各種の発電方式を比較する際、2つの指標がある。1つは製造から運用、廃棄、リサイクルまでに要するトータルコストだ。もう1つは同様にトータルエネルギー。現在の太陽電池のうち、生産規模にして約9割を占める結晶シリコン太陽電池は製造時に高温に熱する必要がある。製造時に必要なエネルギーが少なくない。これは製造コストにも跳ね返っていく。

売電よりも自家消費が有利になるには

 4つの課題のうち、太陽エネルギーの性質以外は技術的に改善が可能だという。短期連載の第1回では、発電コストを取り上げる。

 固定価格買取制度(FIT)を利用している限り、太陽光発電システムの発電コストの上限は、FITの買取価格で決まる。出力10kW以上の全量買取の場合、32円(税別)。

 だが、FITは太陽光発電の普及と各種コスト低減、技術の改善を狙った「一時的な」制度。その後は火力発電を中心とした大規模発電所と真正面からコスト勝負できなければならない。これは電力を生産する側の目標だ。消費する側にも似たような目標がある。太陽光発電システムを設置して、得た電力を自家消費した場合、商用電源よりも有利になる必要がある。

 NEDOは2004年に「PV2030」、2009年に「PV2030+」というロードマップを公開している。FIT運用開始前の指標であるものの、発電コストの目標数値と実現時期を定め、目標実現に必要な太陽電池の変換効率も示している。

 今回の新ロードマップでも、発電コストの目標値自体はPV2030+と変わらない。違いはFITの運用が始まったことを受けて、シナリオを2つに分けたことだ。新ロードマップでは非住宅用と住宅用としている。生産専門の発電所と、主な用途が消費にある住宅では求められる発電コストが異なることに対応した。

 図1に示したのは非住宅用(生産側)のシナリオ。メガソーラーなどの発電コスト目標だ。目標を2段階で定めた。出発点となる2013年時点の発電コストは23円/kWh*2)。2020年の目標は業務用電力価格である14円/kWh、2030年の目標は基幹電源発電コストである7円/kWhだ。

*2) 23円という太陽光発電の発電コストは、FITの買取価格を扱う2013年度の調達価格算定委員会が利用した各種の値を用いてNEDOが試算したもの。正確には住宅用システム23.5円、非住宅用システム23.1円である。

yh20150107NEDO1_MS_590px.jpg 図1 非住宅用システム(発電所)の発電コスト目標 出典:NEDO

 業務用電力価格とは、業務用ビルや商業施設など高圧契約を結んだ場合の電力価格だ。東京電力の場合、契約電力500kW未満の場合の夏季以外(10月1日〜6月30日)の電力量料金(従量)は1kWh当たり15.99円(税込)。同500kW以上も同額である(2015年1月時点)。基幹電源発電コストとは、火力発電所を中心とした既存の大規模発電所の発電コストを意味する仮の値。

 2011年12月にエネルギー・環境会議 コスト等検証委員会が公開した「コスト等検証委員会報告書」では、2030年の1kWh当たりの発電コストとして以下の数字を上げている。原子力8.9円以上、石炭火力10.3〜10.6円、LNG火力10.9〜12.3円、石油火力23.8〜41.9円。同報告書では太陽光(住宅用)を9.9〜20.0円、太陽光(メガソーラー)を12.1〜26.4円と見積もっている。

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