地方再生に木質バイオマス発電、長野県・塩尻市が国の支援を受けて自然エネルギー

内閣府が支援する地域再生計画の1つに「信州F・POWERプロジェクト」が認定された。長野県の塩尻市が中心になって推進する森林資源の循環活用計画で、中核の事業として大規模なバイオマス発電所を建設する。売電収入の一部を林業従事者に還元して地域の活性化につなげる。

» 2015年01月26日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 長野県全体と塩尻市の位置。出典:内閣府

 長野県は森林の面積が全国で3番目に広い森林県で、県内の78%を自然林と人工林が占めている。ほぼ中央に位置する塩尻市は古くから交通の要所になっていて、農業や林業が盛んな田園都市である(図1)。

 豊富な森林資源を有効に活用しながら、化石燃料に依存しない循環型の社会を目指して、2013年5月に「信州F・POWERプロジェクト」を開始した(図2)。「F」は「Forest(森林)」「Future(未来)」「Factory(工場)」の3つを表している。2015年1月22日に内閣府から地域再生計画の1つに認定されて、国から交付金などの支援を受けることも決まった。

図2 「信州F・POWERプロジェクト」で推進する森林資源の循環活用例。出典:内閣府

 プロジェクトの中核になるのは、約18万平方メートルの市有地に建設する木質バイオマス発電所である。森林で発生する間伐材のほか、木材の加工時に発生する端材などを合わせて、年間に18万立方メートルにのぼる木質バイオマスを燃料に利用する計画だ(図3)。発電能力は10MW(メガワット)で、1日24時間の連続運転で年間に330日の稼働を予定している。

図3 プロジェクトの実施イメージ。出典:塩尻市経済事業部

 フルに稼働できれば、年間の発電量は7920万kWhになり、一般家庭で2万2000世帯分の使用量に匹敵する。発電した電力は固定価格買取制度で売電して、利益の一部を木材の買取価格に反映させる方針だ。2015年4月から発電を開始する予定になっている。

 発電事業と合わせて、地元の建材会社や森林組合連合会などが木材の加工と安定供給の事業基盤を構築する。さらに発電所で生まれる熱を利用して、塩尻市が熱供給事業を計画している。農業用ハウスや公益施設などを対象に、80度の温水を1時間に160トン供給する予定だ。導管を敷設して温水を循環させる方式で、発電所には約40度で全量が戻ってくることを想定している。

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