東京電力が家庭に設置したスマートメーターと連携する新サービスを2月中に開始する。毎月の検針業務を自動化することに加えて、引っ越し時や停電時にスマートメーターと通信する方法で顧客サービスの向上を図る。7月からは電力使用量の見える化サービスも提供する予定だ。
東京電力は2014年4月に東京都の多摩地区からスマートメーターの設置を開始して、2014年度末までに東京以外の地域を含めて合計190万台の設置計画を進めている(図1)。先行して2015年1月20日までに多摩地区で設置したスマートメーター約14万台を対象に新しいサービスを開始する。
当初に提供するサービスは2つで、いずれも特定の状況に限って有効だ。1つは利用者が住居を引っ越す場合に、検針に立ち会わずに移行処理が完了する。もう1つは停電が発生した場合に、スマートメーターの通電状況を東京電力が遠隔から確認して早く復旧させることが可能になる。
これだけでは利用者のメリットは小さいが、続いて7月には電力使用量の見える化サービスをスマートメーターを使って開始する予定だ。毎日の電力使用量の詳細なデータをパソコンやスマートフォンで確認できるようになる。多摩地区に限らずスマートメーターを設置済みの家庭が対象に入る。
家庭に設置したスマートメーターのデータは3種類のルートで提供することになっている。このうち東京電力が多摩地区で開始したサービスはスマートメーターと電力会社のシステムをつなぐ「Aルート」で実施する(図2)。Aルートを使って各家庭の毎月の検針も自動化することができる。
東京電力はAルートの機能を実装するために2つのシステムを開発した。1つはスマートメーターと無線などで通信するシステムで、もう1つが検針したデータなどを処理する運用管理システムである(図3)。この2つのシステムが稼働したことによって、引っ越し時や停電時の新しいサービスも可能になった。
さらにスマートメーターと家庭内の機器をつなぐ「Bルート」のサービスも同様に7月から開始する予定である。Bルートではスマートメーターのデータを家庭内のHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)へ送って、それをもとに家電機器などを制御することができる(図4)。
2016年4月に電力の小売全面自由化が始まることから、東京電力はスマートメーターを活用した新しいサービスで顧客の囲い込みを図る狙いだ。そのほかの電力会社も2016年4月に向けてサービスを開始する準備を進めている(図5)。新電力などには電力会社のシステムを経由して「Cルート」で利用者のデータが送られる。
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