日本最大220MWの洋上風力発電所を新潟沖に、44基で18万世帯分の電力自然エネルギー

ようやく日本でも大規模な洋上風力発電所の建設プロジェクトが各地で活発になってきた。新潟県の村上市の沖合1〜2キロメートルの海域を対象に合計44基の大型風車を設置する計画が始まる。遠浅の海底に発電設備を固定する着床式を採用して2024年度の運転開始を目指す。

» 2015年02月09日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 岩船地域の風景。出典:村上市都市政策課

 村上市は新潟県の最北端にあって、日本海から年間を通して強い風が吹きつける。中でも漁業が盛んな岩船地域の沖合は遠浅で、村上市が洋上風力発電の適地として事業者を募集していた(図1)。

 日立造船を幹事会社とする10社の連合体が事業者に決まり、壮大な建設プロジェクトが動き始める。

 対象の海域は岩船地域の沖合1〜2キロメートルの範囲で、南北に約10キロメートルの長さがある(図2)。水深は10〜35メートルの遠浅だ。現在の計画では1基の発電能力が5MW(メガワット)の大型風車44基を設置する。合計で220MWに達して、これまでに公表された洋上風力発電プロジェクトでは国内で最大の規模になる。

図2 洋上風力発電の対象海域。出典:村上市環境課

 年間の発電量は6億7000万kWhに達する見込みだ。一般家庭の使用量に換算すると18万6000世帯分になり、村上市の総世帯数(約2万2000世帯)の8倍以上に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は洋上風力の標準値を上回る35%を想定している。

 日立造船をはじめとする連合体は事業の実現性を検討したうえで、2015年度中に特別目的会社を設立する予定だ。5年後の2020年4月に着工して、2024年度中の運転開始を目指す。着工前に環境影響評価の手続きが必要で、漁業を含めて地域の自然環境に悪影響を及ぼさないことが前提になる。

 プロジェクトに参加する10社には日本を代表する有力企業が並ぶ(図3)。発電設備の中核になる風車は日立製作所が担当する。日立製作所は洋上風力を対象にした5MWの発電システムを開発中で、2015年度中に販売を開始する予定になっている。この新機種を村上市のプロジェクトでも採用する見通しだ。

図3 プロジェクトの参加メンバー。出典:日立造船ほか

 2014年度から固定価格買取制度に洋上風力の買取価格が新設されたことで、大規模な開発計画が全国各地に広がってきた(図4)。その大半は陸に近い港湾区域内に発電設備を展開する。商用の洋上風力発電で港湾区域の外に建設する例は、現在のところ村上市のほかに山口県の下関市で計画中のプロジェクトがある。

図4 進行中の洋上風力発電計画(2015年1月時点。画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 ただし下関市のケースでは地元の反対によって計画が難航している。村上市の場合は自治体を中心に漁業関係者の調整も進んでいて、今のところ大きな障壁はない。沖合に日本最大の洋上風力発電所を建設することで、地域経済の活性化に役立てるほか、観光にも生かす狙いがある。

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