中部電力は愛知県で運転中の「武豊火力発電所」の設備を全面的に更新する。3基の石油火力を最先端の石炭火力1基に移行して、燃料費とCO2排出量を削減する計画だ。発電能力は石炭火力で最大級の107万kWになる。2021年度に運転を開始する一方、既存の石油火力は2015年度に廃止する。
愛知県の知多半島にある「武豊(たけとよ)火力発電所」では、1号機が1966年に、2〜4号機が1972年に運転を開始した(図1)。すでに1号機は2002年に廃止済みで、残る3基も稼働から40年以上を経過するため設備を全面的に更新する。
従来の4基は石油を燃料に使う火力発電設備だが、これを1基の石炭火力に集約する計画だ。運転中の3基を合計すると発電能力は112.5万kWで、新設する石炭火力は1基でほぼ同等の107万kWを発揮する。
2018年度に着工して、2021年度に運転を開始する予定である。それよりも早く3基の石油火力は2015年度中に廃止する(図2)。
石炭火力の中で最高レベルの発電技術を採用する方針だ。経済産業省と環境省が火力発電のガイドラインとして公表している「BAT(Best Available Technology、最新鋭の発電技術)」に準拠する。BATのうち商用運転が可能な100万kW級の発電方式として推奨されている「USC(Ultra Super Critical、超々臨界圧)」が有力である(図3)。
最先端のUSCは火力発電のエネルギー変換効率を示す「熱効率」が45%以上になる。従来の石炭火力や石油火力の熱効率が36%程度であるのと比べて、2〜3割の改善を図ることが可能だ。それだけ燃料費とCO2排出量を削減することができる。石炭火力はガス火力と比べて燃料費が半分程度で済む利点もある。
中部電力は全国10電力会社の中で最も早く石油火力の削減を進めてきた。2013年度には発電量全体のうち石油火力の比率は1%まで下がっている(図4)。石油火力の発電コストは石炭火力の約3倍、ガス火力の約1.5倍も高く、電力会社の経営を圧迫する。中部電力は燃料費の削減と電気料金の値上げによって、2014年度は3年ぶりに黒字に回復する見通しである。
さらに火力発電のコスト削減を進めるために、東京電力との提携も加速させる。燃料の調達から火力発電の建設までを両社が共同で実施する(図5)。発電所のリプレース(設備更新)も提携範囲に含まれていて、武豊火力発電所が最初のケースになる可能性がある。
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