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» 2015年03月06日 15時00分 UPDATE

法制度・規制:原子力発電にも接続可能量の設定を、集中型電源のリスク回避へ

太陽光を中心に再生可能エネルギーの接続可能量を制限する動きが進んでいるが、同時に原子力にも接続可能量を設定すべき問題点がある。大規模な発電設備が特定の地域に集中するリスクだ。ベースロード電源として常に稼働する原子力発電所は地域ごとに一定の規模に抑える必要がある。

[石田雅也,スマートジャパン]

 電力を安定した状態で供給し続けるためには、地域ごとに需給バランスを維持することに加えて、発電設備や送配電設備のトラブルの影響を最小限に抑えることが重要だ。需給バランスの点では、天候の影響を受ける太陽光発電設備の増加が問題になり、全国7つの地域で「接続可能量」が設定された。

 しかし設備のトラブルに関しては、電力会社に対策を依存する状態になっている。例えば北海道では、冬の電力需要が増加する時期に大規模な火力発電所が重複して停止してしまうと、供給力が需要を下回って停電につながるリスクがある。このリスクは原子力発電所が再稼働することによって、さらに大きくなる。

 政府は各地域の電力を安定して供給できるように、電源の種類を3つに分けて運用することを電力会社に求めている。一定の出力で安く発電できる「ベースロード電源」には原子力や地熱、出力を調整しやすい「ミドルロード電源」には火力、その上で需要の増加に合わせて「ピーク電源」に揚水式の水力を利用する。

 こうした3種類の電源を組み合わせながら、天候によって出力が変動する太陽光発電を抑制して、需要と供給のバランスを維持する必要がある(図1)。九州をはじめ太陽光発電の導入量が拡大した地域では、送配電ネットワークに接続できる太陽光や風力の発電設備を制限することによって、需給バランスを調整しやすい体制を維持しようとしている。

energy_curve_sj.jpg 図1 電力需要が最小の日(5月の晴天日など)の需給イメージと対策。出典:資源エネルギー庁

 そこで問題になるのは、ベースロード電源にトラブルが発生して運転を停止した時である。特に原子力は1基あたりの出力が他の電源と比べて大きいために、地域の供給力が大幅に下がってしまう。電力会社が太陽光発電の接続可能量を試算した時に、原子力発電の供給力を前提にした。その結果を見ると、原子力発電所のトラブルによる影響の大きさがわかる。

 1年間のうち電力の需要が最も小さい日の昼間には、原子力で50%以上の電力を供給することになる地域が3カ所もある(図2)。北海道、四国、九州だ。特に北海道と四国は1カ所の原子力発電所に供給力を依存している。地震や火災などが発生して、発電所全体の機能が停止してしまうと、停電のリスクが極めて大きい。

nuclear1_sj.jpg 図2 電力会社が想定する原子力発電の供給力。出典:資源エネルギー庁

 日本の電力システムが抱える大きな問題点の1つは、特定の地域に大規模な発電所が集中していることである。その点では再生可能エネルギーによる小規模な発電設備を数多く分散して拡大するメリットが大きくなる。

 集中型の電源による停電のリスクを回避するためには、地域ごとに原子力発電に対しても接続可能量を設定する必要がある。通常の場合に電力の予備率(当日の最大需要に対する供給力の余裕)が20%程度あることを考えると、1カ所の原子力発電所から供給する電力は20%以下に抑えるのが望ましい。たとえ発電所全体が運転を停止しても、緊急対応で火力発電の電力を増加すれば、需要に追随することは難しくない。

 仮に原子力発電の接続可能量を20%に設定すると、北海道や四国では1基だけ、九州でも2カ所の発電所で1基ずつを稼働させるのが限界だ。国内には運転可能な原子力発電所は全部で48基ある(図3)。もし1カ所の発電所で1基だけを稼働させると、全国で16基になる。

nuclear2_sj.jpg 図3 国内の原子力発電所の運転状況(2015年1月30日時点)。出典:資源エネルギー庁

 それに伴って、再生可能エネルギーの接続可能量を大幅に増やすことができる。エネルギー基本計画に掲げた「再生可能エネルギーを最大限に伸ばし、原子力を可能な限り低減させる」という方針にも合致する。

 2030年のエネルギーミックス(電源構成)を検討する政府の委員会でも、各種の電源を組み合わせた需給バランスの問題は重要な論点の1つになっている。電力を安定して供給する観点からも、原子力発電の構成比率を議論する必要がある。

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