生協が首都圏の電力を自給自足、再生可能エネルギー中心に調達電力供給サービス

原子力に依存しないエネルギー供給体制を推進する日本生活協同組合連合会が4月1日から、首都圏にある168カ所の事業所の電力をグループ企業からの調達に切り替える。契約電力の規模は2万kWにのぼり、年間の電力量は2万8000世帯分になる。太陽光やバイオマスの割合を高めていく。

» 2015年03月26日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 日本生協連本部ビル(東京都渋谷区)。出典:日本生活協同組合連合会

 日本生活協同組合連合会(略称:日本生協連)は東日本大震災を機に、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入量を積極的に増やしている。2014年6月には新電力の「地球クラブ」を設立して、再生可能エネルギーによる電力の自給自足を目指して準備を進めてきた。いよいよ2015年4月1日から、首都圏の事務所や店舗を中心に電力の供給体制を切り替える。

 地球クラブが電力を供給する事業所は合計168カ所にのぼる。日本生協連の本部(図1)と商品検査センターのほか、東京・千葉・埼玉の1都2県で事業を展開する「コープみらい」の店舗や宅配センターなどが対象になる。168カ所の契約電力を合計すると2万kWで、年間の電力量は1億kWhになる。一般家庭の使用量に換算して2万8000世帯分に相当する。

 電力の調達先は日本生協連とコープみらいが物流施設に設置した太陽光発電設備(合計出力2500kW)に加えて、CO2排出量の少ない天然ガスによる電力や工場の余剰電力などを外部から調達する方針だ(図2)。さらに岩手県で2016年4月に運転を開始するバイオマス発電所(出力1万4000kW)からの調達も見込んでいる。

図2 野田流通センター(千葉県野田市)の太陽光発電設備。出典:日本生活協同組合連合会

 日本生協連は再生可能エネルギーの割合が高い電力を自給自足するために地球クラブを設立した。生協の各施設には電力会社と同等の料金で販売する。固定価格買取制度を利用すれば、買取価格が高い再生可能エネルギーの原価を下げることが可能で、1kWhあたり20円前後の料金で販売しても赤字にならない仕組みだ(図3)。

図3 「地球クラブ」の電力小売事業モデル(上)、固定価格買取制度(FIT)を利用した場合の電力の販売原価(下)。出典:日本生活協同組合連合会

 2016年4月に家庭を含めて電力の小売全面自由化が始まると、同様に再生可能エネルギーの割合が高い電力を販売する事業者が数多く出てくる見通しだ。原子力で作った電力を敬遠する利用者が全国で増えていることから、新規に参入する事業者にとって再生可能エネルギー主体の電力は顧客を獲得する有力な手段になる。

 ただし固定価格買取制度の適用を受けた再生可能エネルギーの電力は宣伝できない可能性がある。買取価格の一部をすべての利用者が負担する制度になっているために、特定の事業者だけが有利に販売できる状況は望ましくない、という理由からだ。経済産業省はガイドラインで規制することを検討している。規制の内容によっては、利用者みずからが小売事業者の電力調達先を調べて選別する必要が出てくる。

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