再生可能エネルギーのコストを国民が負担する「賦課金」キーワード解説

今のところ火力発電と比べて再生可能エネルギーのコストは高い。そのコストの差額を電気料金に上乗せして徴収するのが「賦課金」である。再生可能エネルギーの拡大に伴って賦課金の負担額は年々増えていく。今後どの程度まで上昇するかは、発電コストの低下と国の政策によるところが大きい。

» 2015年03月27日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 再生可能エネルギーを拡大するうえで「賦課金(ふかきん)」の増加が問題視されている。正式には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と呼ぶ。家庭でも企業でも、電力会社以外の事業者から電力を購入する場合でも、毎月の電気料金には必ず賦課金が上乗せされる(図1)。

図1 電気料金の計算方法(家庭向けの標準メニューの場合)。出典:東北電力

 賦課金の単価は年度ごとに改定されて、5月から新しい単価の適用が始まる。2015年度の単価は電力1kWhあたり1.58円に決まり、2014年度の0.75円から2倍以上に拡大した。今後も当面は上がり続ける見通しで、電気料金の上昇につながる。ただし一方で火力発電、特に発電コストの高い石油火力が減ることで「燃料費調整単価」が下がり、全体としては料金水準の上昇を抑えられる可能性もある。

 電気料金に影響を及ぼす賦課金は2012年7月に始まった固定価格買取制度によるものだ。再生可能エネルギーで発電した電力は、国の認定を受ければ固定の買取価格で長期間にわたって買い取りが保証されるようになった。2012年度の太陽光発電の買取価格は非住宅用が1kWhあたり40円(税抜き)で、火力発電の発電コスト(10円前後)と比べると格段に高い。

 そうした発電コストの差額を回収・分配する仕組みが賦課金だ。電力会社をはじめとする電気事業者が発電事業者から電力を買い取ると、国の機関から「交付金」を受け取ることができる(図2)。一方で家庭や企業から賦課金を徴収して「納付金」を国に納めることによって、交付金の原資を確保する仕組みになっている。

図2 賦課金を回収・分配する仕組み。出典:資源エネルギー庁

 これまで国全体の賦課金の総額はほぼ倍増のペースで伸びてきた。2014年度の実績は予想よりも少ない6350億円だったが、2015年度には1兆3000億円を超える見込みだ(図3)。標準的な家庭(月間使用量300kWh)で1カ月あたり474円になる。CO2を排出せず、放射能汚染のリスクもない安全な電力を増やすための費用である。高いと見るか、安いと見るかは、国民の考え方次第だ。

図3 固定価格買取制度による賦課金の推移。出典:資源エネルギー庁

 賦課金の単価には、電力会社の発電コストも影響を与える。電力会社が火力発電などで電力を作るためにかかるコストを「回避可能費用」として算定したうえで、賦課金の単価の計算に反映させるためだ。再生可能エネルギーの電力を買い取ることによって火力発電を減らせることから、その分を買取額から差し引いて賦課金の単価を決めている(図4)。

図4 「賦課金単価」の算定式(各数値は2015年度の場合)。出典:資源エネルギー庁

 この回避可能費用が電力会社によって大きく違う。最も高いのは東京電力で、2015年2月の時点で1kWhあたり13.98円である(図5)。発電量に占める火力発電の割合が大きいからで、最も安い北陸電力と比べて2倍近くになる。ただし賦課金は国全体で一律に決めるため、地域による単価の差はない。

図5 電気事業者別の「回避可能費用単価」(2015年2月時点。画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 回避可能費用が低いほど賦課金の単価は高くなる。今後は火力発電のコストが下がるのと合わせて、原子力発電の比率が増えていく。原子力の発電コストをどう算定するかは政府の意向によって決まる。従来は火力発電よりも低いとみなされてきたが、震災後は安全対策に膨大な費用がかかるようになり、発電コストは大幅に上昇している。

 一方で再生可能エネルギーの発電コストは太陽光を中心に下がっていくため、火力や原子力と比べて発電コストの差が開く状況にはない。国のエネルギー基本計画では再生可能エネルギーを最大限に伸ばす方針を掲げている。賦課金の増加を理由に再生可能エネルギーの導入量を抑えることは方針にそぐわないものの、過剰になれば制度の見直しが必要になってくる。

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