棚田の落差で電力を作る、簡易型の小水力発電が通学路も照らす自然エネルギー(1/2 ページ)

発電能力わずか4.8Wの小水力発電設備が山口県で活躍中だ。県内に広がる棚田の農業用水路に設置して、小さな落差で発電することができる。導入費用を県が100%補助しながら、これまでに4つの地域で発電を開始した。発電した電力はサルの侵入防止対策や通学路の照明に利用する。

» 2015年04月13日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 山口県の東部にある田布施町(たぶせちょう)の農業用水路で3月31日に小水力発電設備が稼働した(図1)。棚田の横を流れる狭い水路に簡易型の発電設備を設置する方式で、発電能力は4.8W(ワット)と小さい。これを2カ所に導入して、費用は合計60万円かかった。

図1 農業用水路に設置した小水力発電設備。出典:山口県農林水産部
図2 サル対策用の電気柵。出典:山口県農林水産部

 農家を中心とする田布施町の集落の1つが、山口県の補助金を活用して小水力発電に取り組んでいる。発電した電力は付近に生息するサルから農作物を守るために、農地を囲む電気柵に利用する(図2)。

 電気柵は既設のフェンスの上に2段の構成で張った。支柱を立てて電線を張りめぐらせる方法で、長さは2.3キロメートルにおよぶ(図3)。この電気柵で3.2ヘクタール(3.2万平方メートル)の広さの農地を守ることができるようになった。

図3 電気柵に対する電力供給の仕組み。出典:山口県農林水産部

 導入した小水力発電設備は山口県が2013年度に実証事業を進めて開発した。現在は田布施町に本社がある機械メーカーが販売している。「フロート式下掛水車」と呼ぶ方式で、水車の下側で水を受けて回転しながら発電する仕組みだ(図4)。小さな落差しかない水流でも発電できるため、農業用水路に適している。

図4 簡易型の小水力発電設備。出典:山口県農林水産部
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.