「脱原発都市」でバイオマス混焼発電、地域の未利用木材を燃料に自然エネルギー

全国で初めて「脱原発都市」を宣言した福島県の南相馬市で、木質バイオマスと石炭の混焼発電が始まった。東北電力が市内で運転する大規模な火力発電所の設備を拡張して、年間に6万トンの木質バイオマスを利用する計画だ。一般家庭で1万世帯分のCO2排出量を削減することができる。

» 2015年04月27日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 南相馬市の沿岸部に立地する東北電力の「原町火力発電所」で4月21日に、木質バイオマスによる混焼発電の試運用が始まった(図1)。原町火力発電所は石炭を燃料に200万kW(キロワット)の発電能力がある東北で最大級の火力発電所の1つだ。

図1 「原町火力発電所」の全景と木質バイオマス混焼設備の位置。出典:東北電力

 1基で100万kWの火力発電設備が2基ある(1号機と2号機)。燃料の石炭を投入する既存の設備を拡張して、木質チップを搬送するコンベアなどを追加した(図2)。当初は少量の木質チップを石炭に混ぜて発電設備の状況を確認しながら、段階的に混焼率を高めていく予定だ。

図2 木質バイオマス混焼設備のイメージ。出典:東北電力

 計画では年間に6万トンの木質チップを利用する。福島県内の森林で発生する未利用木材のほか、隣接する宮城県からも調達する計画で、地域の森林環境の保全と林業の活性化に役立てる(図3)。東北電力は同様の取り組みを秋田県の「能代火力発電所」でも実施する。

図3 木質バイオマスの調達スキーム。出典:東北電力

 6万トンの木質チップを利用できる段階になると、石炭の使用量を2万トン削減することができる。木質チップには化石燃料の石炭よりも多くの水分を含んでいるために重量に差が出る。それでも木材をはじめとして生物由来のバイオマスはCO2を吸収する効果があることから、再生可能エネルギーとみなしてCO2排出量の削減につながる。

 2万トンの石炭を木質バイオマスで代替することによって、年間のCO2排出量を5万トン削減できる見込みだ。一般家庭のCO2排出量(電力やガソリンなどを合わせて年間に約5トン)に換算すると1万世帯分に相当する。

 原町火力発電所がある南相馬市は先ごろ全国の自治体で初めて「脱原発都市」を宣言した。東京電力の「福島第一原子力発電所」の事故を受けて多数の市民が避難生活を強いられているため、同じことを繰り返さないように原子力に依存しないエネルギー供給体制を構築する方針だ。2030年には再生可能エネルギーだけで市内の電力需要をまかなえるようにすることが目標である。

 東北電力は原町火力発電所の構内で太陽光発電も実施している(図4)。発電能力は1MW(メガワット=1000kW)で、2015年1月に運転を開始した。年間に290世帯分の電力を供給することができる。

図4 「原町太陽光発電所」の全景。出典:東北電力

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