電気自動車の普及率10%へ、生産台数が日本一の横須賀市スマートシティ

日産自動車が電気自動車を生産する神奈川県の横須賀市で、普及に向けた新しい取り組みが始まる。メーカーと自治体が協定を結び、集合住宅に充電器を普及させる一方、職場でも充電できるワークプレイスチャージングを推進する。2020年度に市内の電気自動車の普及率を10%まで高める。

» 2015年06月05日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 横須賀市にある日産自動車の「追浜(おっぱま)工場」は「日産リーフ」のマザー工場として、電気自動車の生産台数で日本一を誇る。横須賀市は5年前の2010年から電気自動車と充電設備の補助金を開始して普及を促進してきた。市みずからが10台のリーフを購入して公用車として使っている(図1)。電気自動車の普及が地域経済の発展につながることから、日産自動車と連携協定を締結して新たな取り組みを開始する。

図1 公用車として利用中の「日産リーフ」。出典:横須賀市環境政策部

 連携協定を通じて重点的に取り組むのが充電環境の整備だ。特に集合住宅と企業に充電設備を普及させる。集合住宅では新築物件の8割、大規模な修繕物件の5割で充電器の設置を目指す。企業が保有する従業員用の駐車場にも充電環境を整備して、就業時間中に充電できる「ワークプレイスチャージング」を促進する。市内の100社で実施することが目標になる。

 具体的な施策として、事業者やマンション管理組合を対象に充電器の補助金を交付する。急速充電器を設置する場合には、本体と工事費を合わせて300万円かかるところが10万円の自己負担で済む(図2)。マンションの駐車場に普通充電器(コンセント型)を設置する場合には5000円の自己負担で導入できる想定だ。いずれも国の補助金が大きいが、市の補助金も加えて市民の導入意欲を高める。

図2 充電器を設置する場合の自己負担額の例。出典:横須賀市環境政策部

 さらに電気自動車の車両本体にも補助金を用意する。市内の事業者にはリーフで最も安いSグレードが国と市の補助金を合わせて47万円になり、自己負担額は219万円で購入できる(図3)。商用車の「日産e-NV200」では主力車種の5人乗りGXグレードが105万円の補助金で、自己負担額は302万円になる。

図3 事業者向けの補助金による自己負担額の例。出典:横須賀市環境政策部

 このほかにも横須賀市の職員をモニターにして通勤に電気自動車を利用する取り組みを広げていく。5年後の2020年度に市内の自動車保有台数の10%まで電気自動車を普及させることが連携協定の最終目標だ。横須賀市の自動車保有台数は2014年3月末の時点で自家用と事業用を合わせて18万台にのぼる。その10%を電気自動車に転換できれば、保有台数でも日本一の自治体になる可能性が大きい。

 同じ神奈川県内では水素で走る燃料電池車を普及させるプロジェクトも急速に進んできた。メーカーと自治体の連携による電気自動車と燃料電池車の競争が活発になっていく。いずれもガソリン車に比べるとCO2排出量が少なくて環境負荷が軽減する。

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