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» 2015年07月01日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:101年前の水力発電所を再生、奈良の山奥で小水力に挑む

過疎に悩む奈良県の東吉野村で小水力発電所を建設するプロジェクトが進んでいる。101年前に運転を開始した水力発電所が廃止されて50年以上を経過したが、村の活性化を目指して発電所の復活に取り組む。古くなった水路を再利用してコストを抑える一方、市民ファンドで建設資金を集める。

[石田雅也,スマートジャパン]

 奈良県の東部にある東吉野村は面積の95%以上を森林が占める。スギやヒノキを中心に林業が盛んで、降水量も多い地域だ。村を流れる川の水を利用して、101年前の大正3年(1914年)に「つくばね発電所」と呼ぶ水力発電所が運転を開始した(図1)。発電能力は45kW(キロワット)と小さいながらも、山深い村に電灯をもたらし、林業を発展させた。

higashi_yoshino4_sj.jpg 図1 旧・つくばね発電所(左)、水路跡(右)。出典:東吉野水力発電

 それから50年以上も発電を続けた後、東京オリンピックの前年にあたる昭和38年(1963年)に廃止になった。一方で当時は7000人を超えていた東吉野村の人口も現在は2000人程度にまで減少してしまった。

 過疎に悩む村を活性化するために、住民が中心になって水力発電所を再生するプロジェクトが2013年に発足する。そして2015年6月28日に発電所の建設工事に着手した。建設場所は旧・つくばね発電所の建屋の隣で、石で造られた以前の水路を生かしながら新しい水管を通す計画だ(図2)。

higashi_yoshino2_sj.jpg 図2 旧・つくばね発電所の導水路(左)、水管(右)。出典:東吉野村小水力利用推進協議会

 発電所の建設予定地から川の上流に約1キロメートルの地点から水を取り込んで、有効落差105メートルの水流を利用して発電する(図3)。水量は最大で0.1立方メートルと少ないため、小容量の水流でも効率よく発電できるクロスフロー式の水車を採用することにした。

higashi_yoshino3_sj.jpg 図3 発電所の場所と関連設備の位置。出典:東吉野水力発電

 発電能力は以前を大きく上回る82kWになる。年間の発電量は65万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると180世帯分に相当する。東吉野村の総世帯数(930世帯)の2割をカバーすることができる。運転開始は2016年3月を予定している。

 地元の住民が設立した「東吉野水力発電」が発電所を建設・運営する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電する方針だ。発電能力が200kW未満の小水力発電の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)で、年間の売電収入は約2200万円を想定する。

 東吉野水力発電には「ならコープグループ」が出資するほか、発電事業に必要な資金の一部を市民ファンドで集めて地域ぐるみのプロジェクトに発展させる考えだ。総額5250万円の市民ファンドを7月30日まで募集する。発電事業で得た利益は地域の活性化につなげるための基金として運用することになっている。

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