スマートメーターで30分単位の使用量、東京電力が220万の顧客にサービス開始エネルギー管理

小売全面自由化を前に東京電力が家庭向けのサービス強化を急ぐ。7月1日から東京都内を皮切りにスマートメーターを導入済みの家庭や商店に向けて新サービスを開始した。30分単位の電力使用量をウェブサイトで確認できるサービスのほか、契約電力の変更にもブレーカの交換なしで対応する。

» 2015年07月02日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 東京電力がスマートメーターを利用して提供する新サービスは2種類ある。1つ目はウェブサイトで提供中の「でんき家計簿」の中に、スマートメーターで計測した30分単位の電力使用量をグラフで表示する機能を加える(図1)。毎日0時〜24時のデータを翌日の夕方にはパソコンやスマートフォンで確認することができる。

図1 「でんき家計簿」の表示画面(画像をクリックすると拡大して「時間別グラフ」を表示)。出典:東京電力

 さらに2つ目のサービスでは、各家庭の契約電力を簡単に変更できるようになる。東京電力の管内では家庭向けに5アンペアから60アンペアまで7段階の契約電力を設定することが可能で、それぞれで基本料金が分かれている。従来はアンペアごとにサービスブレーカを取り付けて契約電力を変更する必要があったが、今後は東京電力のセンターから遠隔でスマートメーターの設定を変えるだけで済む(図2)。

図2 「スマートメーターオペレーションセンター」のサービスイメージ。出典:東京電力

 新たに開始するサービスの対象はスマートメーターを設置済みの家庭や商店などで、6月20日の時点では約220万台の設置が完了している。小売全面自由化が始まる2015年度末には合計510万台を設置して、全体で2700万にのぼる家庭や商店の需要家のうち約2割をカバーできる見込みだ。

 東京電力はサービスの拡充に備えて、スマートメーターのセキュリティ管理や運用・保守を担当する「スマートメーターオペレーションセンター」を7月1日に開設した。もし停電が発生した場合でも、センターから遠隔でスマートメーターの通電状況を確認して復旧時間を短縮することができる。

 スマートメーターで計測した電力使用量のデータは3つのルートで家庭や商店に届く仕組みになっている。電力会社とつなぐ「Aルート」のほかに、家庭内のHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)と連携できる「Bルート」、さらに電力会社を経由して小売事業者などからサービスを受けるための「Cルート」がある(図3)。

図3 スマートメーターの情報を提供する3つのルート(画像をクリックすると拡大して全体を表示)。出典:資源エネルギー庁

 東京電力はAルートを使った情報サービスをウェブサイト(でんき家計簿)で提供するだけではなく、Bルートを通じてHEMSにデータを供給するサービスも開始した。HEMSには30分ごとの電力使用量を即時に表示できるうえに、電流値(アンペア)も表示することが可能だ。電流値がわかれば契約電力の変更を検討することもできる。

 スマートメーターを利用した電力使用量の情報サービスでは関西電力が先行している。会員サービスの「はぴeみる電」を通じてAルートの情報をウェブサイトで提供するほか、HEMSと連携したBルートのサービスも2015年2月から一部の地域を対象に実施中だ。

 中部電力も7月1日に会員サービスの「カテエネ」でAルートの情報提供を開始して、関西電力と東京電力に対抗する。各社は小売全面自由化に向けて、地域内の既存顧客を情報サービスで囲い込む一方、今後は地域外の新規顧客の開拓にも生かす狙いがある。

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