洋上風力と潮流発電に日本海で挑む、内陸には雪と太陽光と水力発電エネルギー列島2015年版(17)新潟(1/3 ページ)

日本海に眠る豊富な資源が新潟県のエネルギー戦略を勢いづける。北部の沖合に44基の大型風車を展開する計画が動き始め、実現すれば国内最大の風力発電所になる。20キロメートル離れた島では潮の流れを利用した実証試験も進む。一方で雪が降る内陸部は太陽光と水力発電の導入が活発だ。

» 2015年08月11日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 新潟県は日本海に面して細長く伸びて、海岸線の長さは300キロメートルを超える。その最も北側にある村上市の沖合で、大規模な洋上風力発電の開発プロジェクトが進行中だ。新鮮な海産物が集まることで知られる岩船港(いわふねこう)から2キロメートルほど離れた海域に、合計44基の大型風車を設置する壮大な構想である(図1)。

図1 「岩船沖洋上風力発電」の対象海域(上)、風車設置イメージ(下)。出典:村上市環境課

 村上市が地域経済を活性化させる起爆剤として2013年から検討を進めてきた。現時点の計画では1基あたりの発電能力が5MW(メガワット)の大型風車を44カ所に設置する。沖合の2700万平方メートルに及ぶ海域が対象で、海底の深さは10〜35メートルと浅いため、発電設備を海底に固定する着床式で建設することができる。

 全体の発電能力は220MWになって、実現すれば陸上と洋上を含めて国内最大の風力発電所が日本海に誕生する。洋上風力の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は30%であることから、年間の発電量は5億7800万kWh(キロワット時)を想定できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して16万世帯分になり、村上市の総世帯数(2万3000世帯)の7倍に匹敵する規模だ。

 いよいよ2015年度から開発計画に着手することになり、公募で選ばれた日立造船を中心とする民間企業10社がコンソーシアムを組んで事業性の評価を開始した。順調に進めば2年後には海底のボーリング調査を始めて、7年後の2022年から現地で建設工事に入る。さらに3年間の工事を経て、2025年に営業運転を開始することが目標だ(図2)。

図2 洋上風力発電プロジェクトの工程表(画像をクリックすると拡大)。出典:村上市環境課

 再生可能エネルギーによる電力を大量に供給して地球温暖化対策に生かせる一方で、最大の課題は海の自然と地域の漁業を保護することにある。村上市は検討を開始した当初から、漁業関係者をはじめ地元の理解を得る努力を重ねてきた。実際に建設を始めるまでには環境影響評価のプロセスがあり、その過程で合意を形成していく。

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