電力の契約変更はスイッチング支援システム、2016年3月に運用開始動き出す電力システム改革(45)(1/2 ページ)

小売電気事業者は需要家の意向を受けて契約を変更する場合に、全国どこでも「スイッチング支援システム」を利用して手続きを進めることが可能になる。すでにシステムの準備が整って連携テストに入る段階だ。小売全面自由化の1か月前にあたる2016年3月に本番の運用を開始する。

» 2015年10月21日 15時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第44回:「電源構成の表示義務を回避へ、原子力を増やす電力会社に配慮か」

 電力の需要家が新しい小売電気事業者へ契約を切り替える場合には、2種類の契約変更が発生する。1つは需要家が小売電気事業者と結ぶ「電力供給契約」で、もう1つは小売電気事業者が送配電事業者と締結する「電力託送契約」だ。この2段階の契約変更を効率的に進めるために、すべての小売電気事業者は「スイッチング支援システム」を利用することができる(図1)。

図1 スイッチング支援システムによる契約変更の流れ。出典:電力広域的運営推進機関

 特に手間がかかる託送契約を変更するためには、送配電事業者に供給関係の異動を申し込むのと同時に、従来の小売電気事業者(全面自由化の時点では電力会社)に対して供給廃止を伝える必要がある。この一連の手続きがスイッチング支援システムで完了してしまう。対象になる需要家は新たに自由化する家庭や商店などの「低圧」(契約電力50kW未満)のほかに、少し規模の大きい「高圧小口」(同500kW未満)も含まれる(図2)。

図2 スイッチング支援システムの機能と対象範囲。出典:電力広域的運営推進機関

 小売電気事業者が需要家と供給契約を結ぶ前に必要な情報もスイッチング支援システムで入手できる。需要家の過去13カ月間の電力使用量と利用中の設備に関する情報だ。この情報を使って小売電気事業者は需要家ごとに最適な料金プランを提案することが可能になる。

 電力使用量に関しては企業や自治体などが使う「特別高圧・高圧」(契約電力500kW以上)のデータも提供できるようになる。このほかに低圧の太陽光発電設備などから電力を供給する場合の契約についても、固定価格買取制度(FIT)の対象設備であればスイッチング支援システムで変更手続きが可能だ。より高く買い取ってくれる小売電気事業者に売電しやすくなる。

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