電源構成の表示義務を回避へ、原子力を増やす電力会社に配慮か動き出す電力システム改革(44)(1/2 ページ)

消費者が電力の購入先を選ぶ時に、原子力や再生可能エネルギーなど電源の種類が判断材料の1つになる。政府は小売電気事業者に対して電源構成の開示を義務づける方向で検討を進めてきたが、義務化しない可能性が高まってきた。消費者の誤解を招きかねないなどの理由を挙げている。

» 2015年10月19日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第43回:「新電力40社が小売電気事業者の審査を通過、料金を決めて営業開始へ」

 小売全面自由化の実施に向けて、電力の取引に関する制度やガイドラインの検討が進んでいる。経済産業大臣の直属組織として公正・中立な立場で電力取引を監視する役割の「電力取引監視等委員会」が制度設計の会合を通じて、2015年末までにガイドラインの素案をまとめる予定だ。

 特に重要なのは電力の需要家を保護するためのルールづくりである。委員会では小売の営業に関して、5つの分野にわたって詳細なルールを策定する方針だ(図1)。その中でも議論を呼んでいる検討事項が、「電源構成の開示」を小売電気事業者に義務づけるかどうかである。

図1 小売全面自由化に向けて需要家保護の観点で検討する項目。出典:電力取引監視等委員会

 経済産業省は電力取引監視等委員会が発足する以前から、電力小売の制度設計を進めてきた。電源構成の開示に関しては、2015年7月28日に開催した「電力システム改革小委員会」で小売電気事業者に義務づける方向性を示していた。原子力・火力・水力・再生可能エネルギーなどの構成比を開示することを義務づけたうえで、さらに詳細な情報開示を事業者の判断で実施する案だ(図2)。

図2 電源構成の開示例。左が標準版、右が詳細版(画像をクリックすると拡大)。出典:電力システム改革小委員会

 ところが検討の場が電力取引監視等委員会に移って開催した10月9日の会合で、電源構成の開示を義務化しない可能性を示唆する資料が事務局から提示された。電源構成を開示する意義と懸念点を挙げたうえで、電源構成の比率を算定・開示する方法について13項目に及ぶ問題点を指摘した。もし小売電気事業者が電源構成を適切な方法で算出しなかったら、消費者を混乱させるおそれがあり、事業者間の競争条件もゆがめてしまう。

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