液体金属を“流す”だけで電力に、発電装置の小型化につながる新発見(1/2 ページ)

東北大学らの研究グループが液体金属中の電子の自転運動を利用した新しい発電法を発見した。直径数百ミクロンの細管に液体金属を流すことで、100nV(ナノボルト)の電気信号が得られることが分かったという。

» 2015年11月06日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 東北大学らの研究グループは、細管に液体金属を流すことで電気信号が得られることを明らかにしたと発表した。新たに発見したこの発電法は、従来の発電機のタービンのような構造物を必要としないため、発電装置の小型化やわずかな電気で動作するナノサイズ電源技術への応用が期待できるという。

 電子は電気と磁気の2つの性質を持ち、磁気は「スピン」と呼ばれる電子の自転運動に起因する。近年この電子の自転運動を制御する「スピン流」により、磁気の流れを生み出すことが可能になった。スピン流を流す際に発生する熱量は電流と比較して極めて小さいため、電子デバイスに利用して省エネルギー化を図ろうとする研究開発も進んでいる。

 スピン流の生成と制御は電子スピンの相互作用を利用する。既に電磁場、熱、音波などとの相互作用を通じて、さまざまなエネルギーをスピン流に変換する技術が確立している。しかしこうしたスピン流の利用は固体物質中に限られており、水銀やガリウム合金といった液体金属においてスピン流の生成が行えるかは分かっていなかった。

 こうした背景がある中で、研究グループは周囲の物体の振動や回転運動に影響され、物体中を流れるスピンの現象を理論と実験の両面から研究し、流れる液体金属中に電子のスピン流を生み出す方法を発見した。

 水銀やガリウム合金のような液体金属を細管に流すと、管の内壁と液体金属の間の摩擦によって、液体金属中に渦運動が発生する(図1)。この渦の強さは管の内壁で最大となり、内壁から管の中心に向かうにつれて弱まり、中央部分ではゼロとなる(図2)。

図1 細管に液体金属を流すイメージ図 出典:科学技術振興機構

 こうした渦運動の分布により、液体金属中の電子の自転運動が影響を受け、渦運動の強いところから弱いところに向かってスピン流が流れることが理論計算で分かったという。さらに管の内壁から中心に向かって生成されたスピン流は液体金属中で散乱され、管に沿った方向に電圧が発生することも明らかになった。

図2 細管内に発生する渦運動(クリックで拡大)出典:科学技術振興機構
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