世界で初めて台風直撃に耐えた浮体式洋上風力発電、課題はコストと設置方法自然エネルギー(1/2 ページ)

海に浮かべた風車で発電する浮体式洋上風力発電への期待が高まっている。日本初の浮体式洋上風力発電所実証実験受託企業の1社である戸田建設では「エコプロダクツ2015」に出展し、浮体式洋上風力発電の動向について紹介した。

» 2015年12月14日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 風力発電には安定した風力が必要になる。洋上は陸上に比べて風速が強く安定かつ効率的に発電が見込まれている。加えて日本は排他的経済水域が世界で6番目に大きい海洋国であり、洋上風力発電を安定的に運用できるようになれば、再生可能エネルギーの導入やエネルギーリスクの低減の面で大きな価値を持つ。これらのことから洋上風力発電には大きな期待が集まっている状況だ。

 洋上風力発電の内、海の底に建設する「着床式」については既に実用化が進んでいるが、より幅広い海域に設置でき、遠浅が少ない日本周辺海域での設置に期待が高い「浮体式」については、現在実証研究が進められているところである。

 この浮体式洋上風力発電で世界に先駆けて、商用レベルの実証実験を開始したのが、環境省が主導し戸田建設などが受託企業として参加する長崎県五島列島の椛島(かばしま)沖合の海域で行っているプロジェクトである(関連記事)(図1)。

photo 図1 浮体式洋上風力発電の実証機「はえんかぜ」(クリックで動画再生へ)出典:環境省

 浮体式洋上風力発電の形状は円筒形や三角構造のものなど、いくつかのタイプが開発されているが、今回の最新プロジェクトによる実証機「はえんかぜ」は円筒形のスパー型を選択している(図2)。非常に巨大で浮体の直径は最大で7.8メートル、水上に出ているハブの高さは56メートルで、高さは全長172メートルにも及ぶ。2000kW(キロワット)風車を搭載しており、ローターの直径は80メートルとなっている。発電量は約1800世帯分の電力に相当するという。

photo 図2 実証機の構造と大きさ 出典:環境省

 同プロジェクトは2011年度からの5カ年計画で進められており、2012年6月には100kW風車を搭載した小規模試験機での実証を行い国内で初めて一般家庭向けの送電に成功した。また2012年9月には戦後最大級となる台風16号が五島列島付近を通過し世界で初めて台風の直撃に耐えた浮体式洋上風力発電になったという。2013年10月に「はえんかぜ」の設置を完了。既に「はえんかぜ」でも2年間発電を行っており、2015年度は事業性評価のための年度となっている。

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