圧縮機を使わず高圧水素を供給可能に、水素ステーションのコスト大幅削減へ蓄電・発電機器(1/2 ページ)

日本国内で整備が進められている水素ステーション。しかしさらなる普及には現在1基当たり3〜6億円かかる設置コストの低減が必須だ。産業技術総合研究所などの研究チームは圧縮機を使わずに高圧水素を連続供給する技術を開発した。設置コストの多くを占める水素の圧縮コストの低減に貢献するという。

» 2015年12月14日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 産業技術総合研究所(以下、産総研)と再生可能エネルギー研究センターの研究チームは、圧縮機を用いずにギ酸から高圧水素を連続的に供給する技術を開発したと発表した。水素ステーションの設置に掛かるコストの大幅な低減に貢献する技術だという。

 産総研によれば水素の圧縮に用いる圧縮機は、水素ステーションの設備費用の約30%、蓄圧機を含めれば約45%を占める。さらに水素の圧縮にかかるコストは、供給する水素価格の約50%に達する。このため水素ステーション設置だけでなく、広く水素利用の普及を推進する上で、水素圧縮の省エネルギー化と低コスト化は重要な鍵となる。

 開発した技術は、イリジウム錯体によってギ酸から水素を効率的に発生させ、化学エネルギーを圧力エネルギーとして取り出して高圧水素を得るというもの(図1)。常温で液体のギ酸は、分解すると水素と二酸化炭素が得られる。逆にギ酸は二酸化炭素と水素の反応によって生成できる。このように常温で液体のギ酸を活用し、水素を扱いやすい別の状態にして運ぶことで、水素キャリア全体のコストを抑える狙いだ。

図1 今回開発した高圧水素の連続製造法の概略図 出典:産業技術総合研究所

 産総研では2012年にイリジウム錯体を使い、100度以下のギ酸から水素を効率的に発生させる技術を開発している。ただし同時に発生する二酸化炭素を除去する精製工程や高圧水素への圧縮工程が必要だった。そこで今回、イリジウム錯体触媒で高圧水素を製造し、さらに高圧であることを利用して二酸化炭素を分離して、簡便に素早く40MPa(メガパスカル)以上の高圧水素をギ酸から製造する技術の開発に取り組んだ。

 今回開発した技術ではギ酸とイリジウム錯体触媒を耐圧の反応容器に入れ、80度で反応させると、容易に40MPa以上の高圧の水素と二酸化炭素の混合ガスを連続的に発生させられたという(図2)。

図2 ギ酸から発生した水素と二酸化炭素の発生量と圧力 出典:産業技術総合研究所

 理論上は225MPaの高圧ガスを得ることが可能であり、現在50MPaまでの高圧発生を確認しているという。さらに発生した高圧ガスは、水素と二酸化炭素だけで、ギ酸の分解反応で副生しやすい一酸化炭素は検出されなかったという。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.