自由化後の電気料金のベースが決まる、家庭向けの接続料は6〜9円台動き出す電力システム改革(53)(1/2 ページ)

小売電気事業者が電力会社の送配電ネットワークを利用するために支払う「託送料金」の単価が確定した。これを受けて各事業者は2016年4月から提供する家庭向けの料金メニューを設定する。新たに決まった託送料金は従量部分の単価が一律で、従来のような3段料金制をとる必要はなくなった。

» 2015年12月22日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第52回:「小売営業ガイドラインが固まる、セット販売の説明や電源構成の開示など」

 経済産業省は2016年4月から小売電気事業者に適用する「託送料金」を認可した。託送料金は電力会社が送配電ネットワークの使用料として小売電気事業者から徴収する料金で、これから各事業者が発表する新しい電気料金のベースになるものだ。

 電力会社10社が12月18日に一斉に公表した自由化後の託送料金は「二部料金制」をとる。月額固定の「基本料金」と使用量に基づく「電力量料金」の2本立てで、従来の電気料金の体系と同様である。ただし電力会社が家庭向けに標準で提供している「従量電灯」では月間の使用量に応じて電力量料金の単価を3段階で設定しているが、託送料金は使用量に関係なく一律になる。

 この結果、小売電気事業者は3段料金制をとる必要がなくなり、月間の使用量に関係なく電力量料金を設定することが可能だ。電力会社も同様の自由料金メニューを設定できる一方、現行の従量電灯を引き継ぐ3段料金制の「経過措置約款」も国の認可を受けながら継続する(図1)。各地域の家庭が自由化後も従来の料金メニューを選択できるようにする措置だ。

図1 小売全面自由化に伴う料金メニューの体系変更(画像をクリックすると2020年4月以降の体系と注釈も表示)。出典:経済産業省

 2016年4月から電力会社を含めて小売電気事業者が提供する自由料金メニューは、各社が調達する電力のコストに託送料金を加えて、さらに販売コストと適正な利潤を上乗せして決定する。託送料金が確定したことで、ようやく小売電気事業者は料金メニューを決められる状況になった。

 ただし全国10地域の託送料金はバラつきが大きい(図2)。電力会社によって基本料金と電力量料金の配分に差があることも一因だが、各社の発電コストと送配電コストが影響している。

図2 電力会社の家庭向け標準メニュー(従量電灯)と託送料金(電灯標準接続送電サービス)の単価

 託送料金の基本料金と電力量料金が両方とも安いのは北陸電力である。電力量料金の単価は1kWh(キロワット時)あたり6.89円で、北陸電力が家庭向けに提供している従量電灯の1段料金(3段料金制の最低額)と比べて4割弱だ。残り6割強の範囲で小売電気事業者は家庭向けの料金を設定できる。この割合は全国10地域の平均的な水準である。

 対して託送料金が最も高いのは沖縄電力だ。電力量料金の単価は9.84円になり、1段料金に対しても43.8%と高めである。それだけ小売電気事業者の裁量範囲が小さくなる。その点では東北電力の託送料金が割高で、1段料金の48.4%に相当する。家庭向けの単価の半分近くを送配電ネットワークのコストが占める。一方で北海道電力の託送料金は1段料金の3分の1に収まるため、小売電気事業者が参入しやすい。

 市場規模が大きい東京・中部・関西の3地域では、託送料金は低めに設定された。電力量料金の単価が7円台で、1段料金に対する比率も4割を下回っている。特に割安なのは関西電力で、北海道電力に次ぐ低い水準(1段料金に対して34.5%)である。

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