小売営業ガイドラインが固まる、セット販売の説明や電源構成の開示など動き出す電力システム改革(52)(1/2 ページ)

政府は電力の小売営業に関するガイドラインの素案を策定した。小売電気事業者に家庭向け標準メニューの公表を求めるほか、ガスや電話とセット販売する場合の割引・解除条件の説明も必要とする。原子力や再生可能エネルギーを含む電源構成の開示は義務化せずに、「望ましい行為」にとどめる。

» 2015年12月16日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

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 すでに100社を超える小売電気事業者が2016年4月の全面自由化に向けて事前登録の申請を済ませた。代理店などを含めると、数百社にのぼる事業者が電力の販売に参入する見通しだ。1月から家庭向けの新規契約に対する申込みの受付が始まるのに先立って、政府は電力の小売営業に関するガイドライン(指針)を示して適正な販売活動を求めていく。

 ガイドラインは営業・契約に伴う事業者の行為を5つの分野にわたってまとめたもので、12月4日に開催した電力取引監視等委員会の「制度設計専門会合」で素案を公表した。この素案をもとに経済産業省が12月末までに内容を確定して、小売電気事業者が順守するように促す方針だ。

 特に家庭を中心とする小規模な需要家を保護するための情報提供に関する規定が多くを占めている。料金プランをはじめ一般的な情報の提供に関して、3つの「望ましい行為」と2つの「問題となる行為」を示した(図1)。

図1 需要家に対する一般的な情報提供の指針(項目欄のページ番号はガイドライン文書の掲載ページ)。出典:経済産業省

 望ましい行為として、家庭や商店が利用する低圧の標準メニューを公表するほか、平均的な月額料金の例示を挙げた。現在の電力会社が実施している情報提供の内容と同様だ。料金の請求にあたっては使用電力量などの情報を示すことも必要として、怠った場合には問題となる行為とみなす。

 さらに契約面でも2つの問題となる行為と4つの望ましい行為を規定する。小売全面自由化に合わせて電力とガスや電話をセット販売するケースが増える見込みで、セット販売に関して問題となる行為と望ましい行為が1項目ずつ加えられている(図2)。

図2 契約に先立つ説明や書面交付の指針(項目欄のページ番号はガイドライン文書の掲載ページ。赤字の項目は当初案から追加・変更)。出典:経済産業省

 セット販売にあたっては電気料金と他の商品の料金を個別に示したうえで、全体の割引料金を明示する必要がある(図3)。それに加えて料金の割引を受けられる条件をわかりやすく説明して書面で交付しないと、問題となる行為とみなす。問題となる行為は業務改善命令や業務改善勧告の対象になる。

図3 セット販売時の料金明示例。出典:経済産業省

 このほかにセット販売では契約の解除に伴って違約金が発生する問題がある。電力と他のサービスの契約期間がずれていると、一括で契約を解除した場合に違約金を請求されるケースが多い(図4)。こうした違約金が発生することを事業者は契約時に適切に説明しなくてはならない。

図4 セット販売の解除に伴って発生する違約金(上)、複数のサービスを新規でセット販売する場合の推奨例(下)。出典:経済産業省

 もし複数のサービスの契約期間がずれていると、需要家はセット販売の契約解除が難しくなってしまう。このような問題を解消するために、新規でセット販売の契約を結ぶ場合には同じ期間で設定することや、最も長期の契約期間が満了した場合には違約金なしで解除できるようにすることを、望ましい行為としてガイドラインで規定する。

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