電力会社10社の託送料金、最も割安は関西、割高は東北動き出す電力システム改革(51)(1/2 ページ)

小売全面自由後に事業者が電力会社に支払う「託送料金」の水準が確定した。託送料金は電力会社の送配電ネットワークを利用して電力を供給するために必要なコストで、各事業者は2016年4月から新しい料金プランに反映させる。注目の家庭向けでは関西の託送料金が最も割安になる。

» 2015年12月15日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第50回:「電力の購入先変更を検討する人が8割に、電気の質に不安も」

 2016年4月から家庭向けの電気料金はどのくらい安くなるのか。それを大きく左右するのが「託送料金」の水準だ。小売全面自由化後には、電力会社を含む小売電気事業者が送配電事業者(電力会社の送配電事業部門)に託送料金を支払って、地域に広がる送配電ネットワークを利用して家庭まで電力を供給することができる(図1)。

図1 小売全面自由化後の電気料金の仕組み。出典:経済産業省

 託送料金が安ければ小売電気事業者は電気料金を柔軟に設定できる一方、高い場合には料金水準を低く維持することが難しくなる。電力会社の託送料金は小売全面自由化後も国の認可を受ける必要がある。電力会社10社が国に申請していた金額に対して、電力取引監視等委員会が12月11日に査定結果を発表した。これを受けて経済産業省が各社に修正指示を出したことで、2016年4月から適用する託送料金の水準が確定した。

 託送料金は新たに自由化する家庭・商店向けの「低圧」のほかに、すでに自由化されている企業・自治体向けの「高圧」と「特別高圧」に分かれる。さらに契約タイプや時間帯別の料金プランで差がある。国の修正指示を通じて決まった託送料金は低圧・高圧・特別高圧の平均単価で、これをもとに電力会社は個別の料金プランを確定させて、12月末までに認可を受ける見通しだ。

 国が各社に出した修正指示の金額を見ると、地域による差がかなり大きい。特に注目の低圧では、北陸と関西が電力1kWh(キロワット時)あたり7.81円で最も安い(図2)。対して最も高いのは沖縄の9.93円で、次いで東北が意外にも9.71円と高額で続く。この託送料金の単価は定額の基本料金と従量制の電力量料金を含む金額である。

図2 小売全面自由化後の託送料金の平均単価(国の修正指示)。出典:経済産業省

 参考までに家庭向けの標準的な料金プランである「従量電灯」の1段料金(月間使用量に基づく3段階の電力量料金のうち最低額)と比べると、東北の託送料金が最も割高だ。その次に九州が高い。一方で現在の電気料金が高い関西では割安な託送料金になり、新規参入の小売電気事業者には有利な状況と言える。1段料金が全国で最も高い北海道の託送料金も相対的に安い。

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