電力会社10社で1兆円超の利益を上げるも、売上高は前年比4.7%減少電力供給サービス(1/2 ページ)

2015年度の第3四半期(4〜12月)の決算がまとまり、電力会社10社の合計で営業利益は1兆円を大きく上回った。原油やLNGの輸入価格が前年の半値に下がったことが最大の要因だ。ただし売上高は10社を合わせて4.7%も減少した。減収率が最も大きかったのは東京電力の8.8%である。

» 2016年02月01日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 10社すべてが黒字を計上したとはいえ、内容を見ると楽観できる状況にはない。第3四半期(4〜12月)の売上高は10社の合計で14兆3234億円、前年から4.7%の減収だった(図1)。減収額は7129億円にのぼり、年間では1兆円近くに達する見通しだ。

図1 2015年度第3四半期(4〜12月)の売上高・営業利益(いずれも連結決算)と販売電力量

 売上高が大幅に減った理由は主に2つある。1つは販売電力量が前年同期と比べて2.9%減少したこと、もう1つは電気料金に上乗せする「燃料費調整額」が2015年の後半からマイナスに転じたことだ。電力会社の経営を圧迫してきた化石燃料の輸入価格が劇的に下がり、燃料費が減少したためである。原油とLNG(液化天然ガス)の輸入価格は半減して、円安・ドル高の影響も吸収した(図2)。

図2 為替レート(左)と原油・LNG輸入価格(右)の変動(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力

 燃料費調整額の単価は3〜5カ月前の輸入価格を平均して決めるために、化石燃料が値下がりする局面では電力会社に差益が生まれる。各社の営業利益が改善した大きな要因になっている。最大手の東京電力の決算の中身を見れば一目瞭然だ。

 東京電力の収入は単独決算では前年から4423億円も減少した。販売電力量の減少分が1450億円、燃料費調整額の影響による減少は4650億円にものぼる。一方で固定価格買取制度による再生可能エネルギーの賦課金と交付金が合わせて1816億円の収入増をもたらした(図3)。

図3 東京電力の収入の内訳(単独決算。画像をクリックすると拡大)。単位は億円。出典:東京電力

 これに対して支出のうち燃料費だけで7361億円も減っている。販売電力量の減少に伴う火力発電の削減効果が1340億円、さらに燃料の輸入価格の減少効果が6020億円もある(図4)。収入に計上する燃料費調整額との差益は1370億円になり、東京電力の連結決算による増益額1639億円の8割以上を占める結果になった。

図4 東京電力の支出の内訳(単独決算。画像をクリックすると拡大)。単位は億円。出典:東京電力
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