太陽光発電に初めて環境影響評価を適用、長野県で89MWメガソーラー計画自然エネルギー(1/2 ページ)

長野県は環境影響評価の条例を改正して、広い土地に建設する太陽光発電所を対象に加えた。最初の事例になったのは諏訪市の高原で計画中のメガソーラーである。188万平方メートルの用地に31万枚の太陽光パネルを設置する一方、森林や湿原を残して自然環境を保全する対策を盛り込んだ。

» 2016年02月04日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 長野県で初めて環境影響評価の対象になったメガソーラーは「諏訪四賀(しが)ソーラー事業」である。諏訪湖から東へ5キロメートルほどの場所にある高原地帯で、近くには避暑地で有名な霧ヶ峰高原が広がっている(図1)。

図1 「諏訪四賀ソーラー事業」の対象区域(赤枠内)。出典:Looop(環境影響評価方法書の要約書)

 メガソーラーを建設する用地は面積が188万平方メートルもある。もともと地元の農業協同組合などが牧草地として使っていたが、広大な土地の維持・管理がむずかしくなり、再生可能エネルギーの発電用地に転換することになった。太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの開発・販売を手がけるLooop(ループ)が事業者としてメガソーラーの開発計画に着手した。

 現在の計画では188万平方メートルの用地のうち約半分を使って、31万枚の太陽光パネルを設置する。発電能力は89MW(メガワット)を想定していて、長野県内のメガソーラーでは最大になる見通しだ。

 太陽光発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を14%で計算すると、年間の発電量は1億kWh(キロワット時)に達する。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して3万世帯分の電力になる。立地する諏訪市の総世帯数(2万世帯)の1.5倍に匹敵する規模だ。運転開始は5年後の2021年度になる予定で、2年間かけて環境影響評価を実施する。

 長野県は全国でも有数の日射量を誇り、森林や河川も多く、再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組む地域の1つである。自然環境を守りながら再生可能エネルギーの導入量を拡大するために、「長野県環境影響評価条例」を2016年1月13日付で改正した。新たに水力・地熱・太陽光による発電設備に環境影響評価の手続きを義務づけた(図2)。

図2 「長野県環境影響評価条例」の改正で対象に加わった事業区分と規模要件(第2種事業は環境影響評価の必要性を知事が判定)。出典:長野県環境部

 このうち太陽光は国の環境影響評価の対象には含まれていない。長野県が独自の基準で実施するもので、敷地面積が50万平方メートル以上の場合には必ず対象になる。水力・風力・地熱も国の基準と比べて規模の要件を厳しく設定した。手続きの流れは国と同様だ。方法書・準備書・評価書の3段階を完了して、ようやく事業者は建設に着手することができる(図3)。

図3 「長野県環境影響評価条例」に基づく手続きの流れ。出典:長野県環境部
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