太陽電池パネルの断線や絶縁不良を簡単検出する技術、ベンチャーがタイで展開へ太陽光

NEDOプロジェクトの成果を生かし、ベンチャー企業が日本とタイに太陽光発電システムの故障検出装置の展開を開始する。

» 2016年02月26日 15時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトの成果を活用し、システム・ジェイディー(福岡市)は、太陽光パネルの新たな携帯型故障検出装置「SOKODES GF(ソコデス GF)」を開発した。同装置は、太陽光パネルが機能不全となる主な要因である断線による障害の有無やその位置の推定など従来製品と同様の機能をもち、さらに絶縁不良の有無やその位置を推定する新しい機能が加わっている。同社は、この装置を製品化し、今春から国内外に向けて販売を開始する。

photo 図1 「SOKODES GF」の仕様風景 出典:NEDO

 NEDOは、ベンチャー・中小企業などが保有している新エネルギー分野の潜在的技術シーズを活用した技術開発について、その技術面や事業化の面での優位性や独自性などの観点から、有望案件を選抜・育成し、事業化を見据えた支援をする「新エネルギーベンチャー技術革新事業」を2007年度から実施している。この中で、2010〜2012年度の間、システム・ジェイディーは、太陽光発電分野での活用が期待される太陽電池アレイ故障診断の技術開発に取り組み、現在、太陽光パネルが機能不全となる主な要因である断線による障害の有無やその位置の推定などが可能な故障検出装置の携帯型ソコデスおよび、同様の機能をメガソーラーなどに組み込んだ組み込み型ソコデスを開発、販売している。

 また2015年には、NEDO「国際エネルギー消費効率化など技術・システム実証事業」で、組み込み型ソコデスを用いた遠隔監視システムを、タイを起点として海外展開するため、大手通信インフラ企業と共同で先導調査を実施した。その結果、地絡(太陽光発電設備は大地から絶縁された状態であるが、これが何らかの異常により破壊され電気が大地に向かって流れる現象)による障害を検出するユーザーニーズを明確にしている。

 今回、NEDOプロジェクトの成果を活用して、同社は従来製品の機能に加えて、絶縁不良(地絡)による障害の有無やその位置を推定する機能を備えた装置を開発した。新装置には従来のパネル内や接続ケーブルの断線を、日射量の影響を受けずに、ストリング単位で測定することにより検出する機能に加え、パワーコンディショナと太陽電池パネルの間に、複数のストリングを束ねるために設置される接続箱などから一括で測定することで、地絡の有無を検出する機能を搭載している。従来の断線検出機能と同様、地絡検出機能もストリング単位で測定し、不具合箇所を推定することが可能だ。

 同社は欧州などのグローバル展開に必要なCEマーキングの適合宣言を2016年1月21日に行った。それにより、新装置は海外へのメンテナンス事業のキーデバイスとして使用可能となる。今後は装置の普及を進めるとともに、結晶シリコン系太陽光パネル以外での適用を目指した開発も行い、さらなる有効活用に取り組む方針だ。

photo 図2 遠隔監視システムのシステム図 出典:NEDO

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