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» 2016年03月01日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2015年版(45)宮崎:九州一の森林県にバイオマス発電所が続々誕生、太陽光で水素も作る (1/3)

面積の76%を森林が占める宮崎県で木質バイオマス発電所が相次いで運転を開始した。豊富な日射量を生かせるメガソーラーの建設計画も目白押しだ。集光型の太陽電池を使って発電した電力で水素の製造試験も始まっている。さらに小水力発電を加えて南国の再生可能エネルギーは拡大する。

[石田雅也,スマートジャパン]

 宮崎県の日向灘(ひゅうがなだ)に面した工業団地の一角に、製材会社の中国木材が運営する日向工場がある。2014年に稼働した新しい工場では、国産と外国産の木材を使って製材から乾燥・加工までを一貫処理するのと同時に、製材後の端材などから木質チップを製造してバイオマス発電に利用している(図1)。

hyuga_biomas1.jpg 図1 中国木材日向工場の木質バイオマス発電設備。出典:中国木材

 発電能力は18MW(メガワット)で、2015年3月に運転を開始した。バイオマス発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を80%で計算すると、年間の発電量は1億2600万kWh(キロワット時)になる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して3万5000世帯分に相当する。工場が立地する日向市の総世帯数(2万5000世帯)の1.4倍に匹敵する規模だ。

 発電に伴って生まれる熱は木材の乾燥に利用してエネルギーの有効活用を図る。30万平方メートルに及ぶ工場の構内には、原木の貯蔵エリアや乾燥機のほか、大量の木質チップを格納できるバイオマス燃料倉庫がある(図2)。地域の林業を活性化できることに加えて、新たな雇用を創出する効果も大きい。

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hyuga_biomas3.jpg 図2 日向工場の設備構成(上)、バイオマス発電設備(左下)、バイオマス燃料倉庫(右下)。出典:中国木材

 この工場から沿岸部を南へ100キロメートルほどの場所にある王子製紙の日南工場でも、新しい木質バイオマス発電設備が稼働中だ(図3)。2015年4月に運転を開始して、発電能力は25MWに達する。年間の発電量は1億5000万kWhにのぼり、4万世帯分を超える電力を供給できる。日南市の総世帯数(2万3000世帯)の1.8倍に匹敵する。

nichinan_biomas.jpg 図3 「王子グリーンエナジー日南」の木質バイオマス発電設備。出典:王子ホールディングス

 製紙会社では大量の木材を消費することから、地域で発生する間伐材などの未利用木材を集約して燃料の木質チップも生産している。発電した電力は王子グループが新電力大手の伊藤忠エネクスと設立した「王子・伊藤忠エネクス電力販売」に供給する。グループで再生可能エネルギーを多く含む電力を販売して地産地消を推進していく。

 さらに地域の民間企業が参画した木質バイオマス発電のプロジェクトもある。場所は日向市から南へ30キロメートルほどの距離にある川南町(かわみなみちょう)だ。2015年4月に「宮崎森林発電所」が運転を開始した(図4)。

miyazaki_shinrin.jpg 図4 「宮崎森林発電所」の木質バイオマス発電設備。出典:宮崎森林発電所

 発電所の運営会社には地元の企業が約4割を出資している。発電能力は5.8MWで、年間に4500万kWhの電力を供給できる見込みだ。発電量は1万2500世帯分に相当して、川南町の総世帯数(6000世帯)の2倍を超える。

 宮崎森林発電所の最大の特徴は、地域の山林まで間伐材を引き取りに行く事業モデルにある。川南町の周辺には山林から間伐材を運搬するための物流網がなく、大きな課題になっていた。発電所の建設と合わせて間伐材の収集体制を整備することで、地域の林業と連携した燃料の調達を可能にした。発電所の構内には木材を乾燥するための貯木場やチップの製造施設も備えている。

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