製鉄工程のCO2排出量、30%削減する分離・回収技術を2030年に確立へ省エネ機器

NEDOプロジェクトで建設が進められていたCO2の分離・回収技術を開発するための試験炉が完成した。新日鐵住金が所有する君津製鉄所構内に建設したもので、2016年度からパイロット規模の総合試験を行い、CO2排出量を約30%削減できる技術を2030年度をめどに確立する計画だ。

» 2016年03月28日 15時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と、新日鐵住金、JFEスチール、神戸製鋼所、日新製鋼、新日鉄住金エンジニアリングは、高炉からのCO2発生量を抑制するとともに、発生したCO2を効率的に分離・回収技術の開発に利用する容積12立方メートルのパイロット規模の試験高炉を開発した(図1)。

 新日鐵住金の君津製鉄所(千葉県君津市)構内に建設したもので、この試験高炉を使い2016年度から総合試験を開始する。これは実際の高炉の数百分の1のサイズだ。計画では2030年頃までにCO2排出量を約30%削減する技術を確立し、2050年までの実用化・普及を目指す方針だ。

図1 完成した試験高炉 出典:NEDO

 鉄鋼業から排出されるCO2は1.8億トン(2013年度)で、産業・エネルギー転換部門最大であり、日本の総CO2排出量の14%を占める。そのため、鉄鋼業からのCO2排出量の削減が求められているが、日本の鉄鋼業は1970年代以降、省エネルギー化に取り組み現在では鉄鋼生産におけるエネルギー効率は世界最高水準を誇る。今後さらなるCO2排出量削減を図るためには、より高度な製鉄プロセスの技術開発が必要となっている。

 こうした背景のもと、NEDOでは、CO2排出の抑制とCO2の分離・回収により、製鉄所からのCO2排出量を約30%削減する技術の確立を目指した「環境調和型製鉄プロセス技術開発」を実施している。このプロジェクトは2008〜2012年度を第1フェーズとして、要素技術開発を実施し、2013年度から第2フェーズとして、STEP1で得られた要素技術の開発成果と課題を反映させパイロットレベルでの総合実証試験を行う計画だ。

 今回、NEDOと鉄鋼関連5社は、試験高炉を用いて、コークス製造時に発生する高温の副生ガスのコークス炉ガス(COG)に含まれる水素と、このCOGを改質して水素を増量し、これらの水素を鉄鉱石の還元材として利用する。これによりコークス使用量を削減して高炉からのCO2排出量を削減する技術と、製鉄所内で未利用の排熱をエネルギー源として利用し、高炉ガス(BFG)からCO2を分離回収する技術の実証を行う(図2)。

図2 実証する製鉄プロセスのイメージ 出典:NEDO

 これまでに、高炉からのCO2排出削減については、主として水素還元などの送風操作により炭素消費原単位(高炉InputC)を削減し、さらには原料操作も含めた総合技術によるCO2排出削減を検討している。また、CO2分離回収設備と連動を含む試験高炉の試験操業計画を策定しており、2017年度以降、パイロット規模の総合試験を行う予定だ。

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