火力発電はCO2を大量に排出する点が最大の問題だ。地球温暖化の進行を防ぐためには、CO2を排出しないで回収する必要がある。火力発電の排ガスからCO2を分離して回収する技術の開発が進んできた。課題はコストが高いことで、2030年までに現在の4分の1に引き下げる。
第4回:「第3世代は水素も生かす、3段階で発電するトリプルコンバインド」
日本が世界に約束したCO2(二酸化炭素)の新たな削減目標では、2030年の排出量を2013年と比べて26%少なくする。そのためには火力発電のCO2排出量を35%削減しなくてはならない。発電設備の効率を上げるだけでは目標を達成することは難しく、CO2を回収して再利用する技術の開発が不可欠になってきた(図1)。
政府は次世代の火力発電の主要な技術の1つに「CCUS」を位置づけている。CCUSは「CO2回収・利用・貯留(Carbon oxide Capture, Utilization, Storage)」を表す。火力発電では燃焼時に出る排ガスの中に大量のCO2が含まれている。排ガスの中からCO2を分離して回収したうえで、再利用するか地下などに貯留すれば、大気に排出せずに済む。
まず必要なことはCO2の分離・回収技術を確立することだ。現在は技術開発の初期段階にあって、さまざまな方法を試しながら有効性を検証している。特にCO2排出量の多い石炭火力が対象で、主な方法は4種類ある(図2)。最も早く開発が始まった「化学吸収法」から順に見ていこう。
第1世代の石炭火力では、燃焼後の排ガスに含まれるCO2を回収する方法をとる。第2世代のガス化してから燃焼する発電設備になると、燃焼前のガスの段階でCO2を回収する方法が標準的になる。いずれの場合でも液体を使って気体の中のCO2を吸収することができる。
化学吸収法は液体中の成分と気体のCO2が化学反応を起こして結合する原理を応用したものだ。代表的な方法はアンモニア化合物の「アミン」を溶液にしてCO2を結合させる(図3)。この時に吸収できるCO2の量はガス中に占めるCO2の圧力(分圧)によって変わる。化学吸収法は分圧が低くてもCO2を吸収しやすい点が特徴である。
同様に液体にCO2を吸収させる方法として「物理吸収法」がある。CO2を液体の中に物理的に溶解させるもので、CO2の分圧が高くなるほど溶解しやすくなって吸収量が増えていく(図4)。
物理吸収法に利用する液体はメタノールやエタノールなどのアルコール類が多い。高分子化合物のポリエチレングリコールジメチルエーテルを溶液に使う方法が代表的で、「セレクソール(Selexol)法」と呼ぶ(図5)。
排ガス中のCO2の分圧を高くできれば、化学吸収法よりも物理吸収法のほうが効率は高くなる。物理吸収法の技術は2020年をめどに確立できる見通しだ。その時点でCO2分離・回収のコストは従来の化学吸収法と比べて2分の1程度になる。
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