太陽光が支える情報教育インフラ、途上国の無電化地域に高速通信環境太陽光(1/2 ページ)

情報通信研究機構(NICT)はカンボジアの電力インフラが整備されていない農山村地域で、高速データ通信環境の構築に成功した。NICTの開発した独自のネットワークシステムを、災害用太陽光発電システムと蓄電池を使ったオフグリッドシステムを活用して自立稼働させている。これにより無電化地域でも従来人の手で運ばざるを得なかった教育コンテンツなどを瞬時に共有できるようになった。

» 2016年04月01日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 カンボジアの農山村地域では貧困課題の解消を目的に、農業技術を教えるビデオを視聴したり、生産品の売買計算をしたりするために、PCを備えた「TeleCenter(テレセンター)」という施設が設置されている。公衆電話網や電力インフラが整備されていない無電化地域が多く、その場合は太陽光発電設備と蓄電システムを活用して施設に必要な電力をまかなっている。

 しかしPCなどの機器があっても、快適な通信環境が整っていないという課題がある。インターネットに接続して情報を検索したり、ダウンロードしたりすることは難しい状況にあった。そのため新たなビデオ教材などのデータは、人手によって運ばれているという。

 こうした背景から情報通信機構(NICT)とカンボジアで電気通信ネットワークなどに関する専門職のトレーニングや研究を行っているNIPTICTと2014年6月に研究協力協定を締結。農山村地域における高速通信環境の構築に向けた実証を進めてきた。このほど両社は2015年12月から取り組んできたネットワークシステムの構築を完了し、運用を開始。無電化地域において高速通信環境を構築することに成功した。

総延長100kmのネットワークを構築

 今回、高速通信環境を構築したのはカンボジアの首都プノンペンから100km(キロメートル)離れた地域だ(図1)。ネットワークにはNICTが開発した「NerveNet(地域情報共有ネットワーク)」を利用した。

≪図1

 NerveNetは通信機能と情報処理機能を兼ね備えた情報通信ステーションを相互につないで構成する通信ネットワーク。従来の携帯電話などと異なり、複数の基地局のサーバに情報を置き、かつ基地局同士が網の目のように接続された通信ネットワークである点が特徴だ。一部の回線が切断されても、迂回経路へ高速に切り替えて通信を維持する耐災害性を持つ。

 インターネットに依存せずに、データの送受信、蓄積と共有、音声通話とメッセージ交換を行うことも可能だ。今回はこのNerveNetと、新設無線回線、既設の光通信回線を利用して、郊外の農山村地域まで総延長100kmのシステムを短時間・低コストで構築した。

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