CO2の地中貯留を高効率に、大量貯留条件を判別する解析手法を開発エネルギー管理(1/2 ページ)

九州大学と米国ノートルダム大学の研究グループは、効率的にCO2を貯留できる貯留層の条件を明らかにする手法を開発したと発表した。大気中へのCO2排出を大幅に削減し、地球温暖化の防止策として期待されるCO2地中貯留の効率化や、安全性などに貢献できるという。

» 2016年04月12日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 火力発電所などから排出されるCO2を分離・回収し、地中に貯留することで大気中へのCO2排出を削減する「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」の研究開発が進んでいる。地球温暖化防止に有効な技術として世界的に注目されており、日本でも2016年4月から北海道苫小牧市で実証試験が始まる(図1)。

図1 CO2地中貯留のイメージ 出典:経済産業省

 しかし、日本周辺においてCO2を圧入・貯留できる地層(貯留層)が広域的に分布している場所は少ないとされている。そのため限られた貯留層の中に対して、CO2を効率的にを圧入・貯留することが重要になる。こうした背景から九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所と米国ノートルダム大学の研究グループは、効率的にCO2を貯留できる貯留層の条件を検証する手法の研究を進め、このほどその開発に成功した。

数値シミュレーションで正確な検証を可能に

 研究グループは、天然の岩石の中にある微細な間隙(かんげき)の構造を、特殊なCT装置を用いてマイクロメートル単位の高解像度で抽出した。そしてこの岩石モデルを用い、その間隙内部を流れる CO2と水(2相流)の挙動を、格子ボルツマン法(LBM)という数値シミュレーション手法を用いて計算した(図2)。

図2 a:岩石中の間隙構造を高解像度で抽出したもの。黒い部分が間隙部分で、この中にCO2を圧入する/b:aで示した間隙構造の中を流れるCO2の挙動(クリックで拡大)出典:九州大学

 世界最大の計算グリッド数を持つ巨大な岩石間隙モデルに対し、GPUを用いた並列大規模計算を用いることで、LBMによる詳細な流体計算を可能にした。さらに岩石モデルを巨大化したことで、岩石内部に存在する多数の間隙を流れるCO2の挙動を正確に計算し、その水理特性を評価することが初めて可能になったという。

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