木質バイオマス発電で1万4000世帯分の電力、小売電気事業者のFIT電気に:自然エネルギー(2/2 ページ)
発電所に隣接して森林組合の貯木場とチップの製造施設も稼働している。貯木から発電まで一貫体制で効率よく事業を運営できる体制だ(図4)。発電した電力は固定価格買取制度を適用して小売電気事業者に売電する。年間の売電収入は12億円を見込んでいる。一方で発電所の建設費は40億円かかった。
図4 貯木から発電までの一貫体制(上)、貯木場(左下)、チップ製造施設(右下)。出典:神鋼環境ソリューション、福井グリーンパワー
売電先は出資者の出光興産が設立した小売電気事業者の出光グリーンパワーである。関東と関西の企業・自治体を対象に再生可能エネルギー(FIT電気)主体の電力を販売している。2015年度に販売した電力量のうち、再生可能エネルギーと廃棄物で発電した電力が62%を占めた。
2016年度から福井グリーンパワーのバイオマス発電による電力が加わり、販売量の78%を再生可能エネルギーと廃棄物発電で供給できる見込みだ(図5)。出光グリーンパワーは富山・滋賀・奈良・高知の4県の木質バイオマス発電所からも電力を調達して、全体の5割以上をバイオマスで供給する。小売電気事業者の中でもバイオマスの占める割合が極めて大きい。
図5 出光グリーンパワーの電源構成(上、2016年度の計画値)と調達先の主な発電所(下)。出典:出光興産
- バイオマス発電所が森を潤す、原子力の日本海沿岸に風力と波力も
原子力発電所のイメージが強い福井県だが、再生可能エネルギーを導入する取り組みが着実に広がってきた。特に活発なのは地域の森林資源を生かしたバイオマス発電で、県内の2カ所で大規模な建設プロジェクトが進行中だ。沿岸部では風力発電や波力発電の開発も始まっている。
- 未利用木材100%でバイオマス発電、林業と鉄道と石油会社が地産地消を推進
森林率が全国で最高の高知県に日本で初めて、未利用木材を100%使って破砕から一貫処理する木質バイオマス発電所が運転を開始した。年間に7〜8万トンの未利用木材を燃料に、1万1000世帯分の電力を供給することができる。森林組合と鉄道会社が石油大手の出光興産と共同事業を展開する。
- 1.46億kWhを再生エネで生み出す、太陽光から風力まで幅広く拡充
出光興産は石油事業を中心としつつ、地熱、風力、バイオマス、太陽光などのさまざまな再生可能エネルギー事業にも注力している。2012年度に9000万kWhだった再生可能エネルギーによる発電量を、2015年度には約1.6倍の1億4600万kWhに拡大する方針だ。
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