国が打ち出す2つのエネルギー戦略、2030年と2050年の長期目標実現へ法制度・規制(1/2 ページ)

経済産業省と内閣府がエネルギー分野の長期戦略を相次いで発表した。経済産業省は省エネの推進と再エネの拡大を中心に2030年のエネルギーミックスを実現するための施策をまとめた。内閣府は2050年までに温室効果ガスを大幅に削減する革新的なエネルギー関連技術の研究開発を推進する。

» 2016年04月25日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 経済産業省が4月18日に「エネルギー革新戦略」を決定した翌日の19日には、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が「エネルギー・環境イノベーション戦略」(NESTI 2050)を策定して総理大臣に答申した。名称だけでは違いがわからないが、前者は2030年に向けたエネルギー政策を広範囲に取りまとめたのに対して、後者は2050年を見据えた革新的なエネルギー関連技術に的を絞った(図1)。

図1 「エネルギー革新戦略」と「エネルギー・環境イノベーション戦略」の位置づけ(画像をクリックすると「地球温暖化対策計画」も表示)。出典:内閣府

 さらに環境省を加えた3府省で「地球温暖化対策計画」を策定中で、5月中に閣議決定する。立て続けに打ち出す3本の長期戦略を組み合わせて、温室効果ガスの削減と同時にエネルギー産業の改革を目指す。本来ならば1本の戦略にまとめて効率的に推進すべきところだが、多面性を重視して各省庁が取り組んでいく。

 経済産業省のエネルギー革新戦略は5本の柱で構成している。徹底した省エネと再エネの拡大に加えて、電力会社に依存しない新たなエネルギーシステムの構築、IoT(モノのインターネット)や水素を活用した新市場の創出、未来の社会を先取りする「福島新エネ社会構想」の実現だ。

 特に注目したい点は新市場の創出に向けた4分野の施策である(図2)。省エネ政策を抜本的に転換するほか、再生可能エネルギーを含めた低炭素電源の拡大、IoTを活用したネガワット取引の創出、さらに水素社会に向けたサプライチェーンの構築を推進していく。いずれの分野でも2016年度中に新たなルールやシステムの整備に着手する。

図2 「エネルギー革新戦略」による新たな展開(画像をクリックすると革新戦略全体を表示)。出典:経済産業省

 エネルギー革新戦略の目的は2030年に設定した温室効果ガスの削減目標を達成することにある。そのために火力発電の比率を引き下げるエネルギーミックス(電源構成)を実現する。ただしエネルギーミックスで20〜22%を占める目標の原子力発電に関しては、革新戦略の中でまったく触れていない。原子力発電は革新ではなくて既存の技術とみなしているためなのか、経済産業省の置かれた微妙な立場も垣間見える。

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